Eno.145 ユーディット

*休題*

ソフィエロード伯が没落し、ユーディットが奴隷商人に売られた後。
彼の家が治めていた領地は、伯に関する嫌疑を告発した隣地の領主の管轄となった。



しかし――時系列にして、ユーディットがナガサレてきた直後。

隣地含め、其処は全てが淀み、腐り、枯れ萎れ――滅びていた。

領土も、作物も、領民も、森も、水も――何もかも。
まるで、咒い祟りを受けたかの様に。
死の大地へと、変貌してしまったのだ。



其の中で――隣地の領主だけは。

誰かによって、其れは其れは惨たらしく殺害されていた、という。






全ては、強欲な隣地領主による濡衣だった。

ソフィエロード伯の領地は森と水源が豊かで、特に薬草は種類も質も素晴らしかった。
彼の家は薬師としての側面役割も持っており、薬草も水も適切な価値判断の元、領民や周辺領地に分け与えられていた。
其の恩恵によって、領民の健康と安全が守られていたのだ。

隣地領主は、其れを独占したかった。
強欲で横暴ではあったが――ある意味、其れだけだった。

其れだけで――最終的に、何もかも失い、滅ぼし、斃されたのだ。



そして。
当時は、誰も彼もが、忘れていた。

ソフィエロード伯の血筋の者で、只一人。
家督相続権を持たない次男だけが、御堂騎士を夢見て領地外の教会で暮らしていて、難を逃れていた事実を。






どこかで、せいなる■■■の、どうこくが、ひびいている――