Eno.645 ヴィクトル・トート

謎生物日記5


「出来たぞ、ヨナ」

『何ソレ。……いや、聞くまでもなかったか』


心なしかうきうきしながらヴィクトルが見せたのは荷車だった。
もうここまできたら、いちいち言われなくともおれにもわかるというものだ。

『でかすぎるだろ。さすがに引かないからなおれはもう絶対。無理だからな』


そりですら結構限界に近かったのだ。
もう少し大きい姿をしていたら問題ないだろうが、無駄にエネルギーを使いたくない。
この島、なんでか知らないけどやけに消耗が激しいし。
帰るまでにぺちゃんこになってしまったら笑えないだろう。
そう訴えると、予想に反してヴィクトルはこくりと頷いた。

「わかってるよ。さすがにこのサイズをお前に引かせるのはかわいそうだ。
 これは僕が使うものだし、僕が引いていく。
 だからお前はもう何もしなくていいぞ、ヨナ。
 火も一緒に置いておけるしな」


そう言って、ヴィクトルは荷物をどんどん荷車に積んでいく。
文字通りおれの手伝いなんて必要としない。
元々見た目以上に腕力のあるやつだ。荷車を引くくらいわけないだろう。

そうして、さて行くかと荷車が動き始める。
後に残されたのは、ただついていくだけの、おれだ。

『……あのさあ、ヴィクトル。
 ちょっとだけだったら、その……引っ張ってやってもいいぞ』


ヴィクトルがこちらを振り返る。にやりと笑った顔が見えた。