Eno.188 真相探偵

木菟館殺人事件

「お前、絶対探偵向いとるよ」

 彼は笑いながらそう言ったのだった。

 中学時代のおれは若かった。
 否、今が完全に成熟しているとまでは言わないが──その頃は本当に未熟だったんだ。
 世の中には正しくても言って良い事と悪い事があるのをまだ知らなかった。
 校内で、例えば盗難や器物損壊など何かしらの細々した問題が起きれば、犯人を見つけ出して糾弾していた。
 その結果、周囲の人間から獲得した印象は理屈っぽくてデリカシーの欠如した嫌な奴であった。

 前野達也はその頃の唯一の友人だ。
 こんな嫌な奴と好んで仲良くしようとする変わった人間であり、人好きのする朗らかな男だった。

「何でおれが探偵なんだよ」

「色んな意味で。
 もし将来探偵になるんだったら、僕が助手になってやるから」

「言ったな?」

 ──そんな他愛もないやりとりの随分後だ。
〝木菟館殺人事件〟に巻き込まれたのは。

 その事件は、地元である広島から少し離れた鳥取県の某所に建つ『木菟館』という名のホテルで起きた。
 おれたちは、旅行でたまたまそこに宿泊していたのだった。

 前野は宣言通り助手を務めた。
 彼の助力もあって、おれは探偵よろしくその事件の殺害トリックを暴き、犯人を見つけ出した。
 そうして、死者総勢5名を出した凶悪事件は幕を閉じたのだ。
 その事件の最後の被害者は、前野達也であった。
 おれはそこでやっと、彼が自分を探偵に向いていると称した本当の意味を理解した。

 事件そのものがそこそこ大きかったせいで、この件である程度名が知れた。
 高校を通信制に決めて、本格的に探偵業を始めたのは、それからだ。







「そりゃあ探偵なんて仕事、薄情な方が向いてるよな」