追憶の書 十四日目
ある日、中学のクラスメイトと盛大な喧嘩を繰り広げた後に
家に帰ると、珍しく父さんが先に帰っていた。
僕はこれ以上、父さんに気苦労をかけたくなかったから、
学校での事はほとんど父さんには黙っていたし、
父さんも僕の話さない事を無理には訊かなかった。
それから、いつも通り僕が台所に立とうとすると、
父さんが僕を制して言った。
『今日は僕が作るから』
そうしてその後、食卓に並んだものは、
やめときゃ良いのにと思うくらい無惨で、
ぐちょぐちょになった目玉焼きだった。
しかもこれが次から次へ大量に出て来る。
流石の父さんも『これは酷いな』と苦笑しながら、
それに口を付ける僕を暖かく見つめていた。
正直、この目玉焼きの味自体はもうすっかり忘れてしまった。
まぁ見た目からしても、
そんなに驚くほどの美味しさはなかっただろう。
けれど僕は、このぐちょぐちょの目玉焼きを食べて初めて、
ようやく……父さんの所に、
僕の家に……『帰って来た』と感じたんだ。