Eno.319 ニシュプニケ

...人の中...



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「わらいばなしだとでもおもっているの?そうじゃないのよ!」

「だってそうじゃないでしょう、そうよね?そうだったはずでしょう?」


傍に居て欲しい時には居るように、と。ええ、私確かに頼まれたの、嵐の日に。
あなたの為の話だったわ。あなたが困ったり、寂しかったり、不安な時の話よね。
だけどもその後聞いたら、何だか調子がおかしかったし。
それにそうして呼ばれる事は無かったし。
行方不明がいた時だって呼ばなかったし。

だからてっきり、それは“無い話”になったのだと思ったのだわ!

そうでなかったから、私本当に驚いたのよ。


「……ほんとうにびっくりしたの……」


私、雨なんてどうでも良いわ。嵐だって構わないの。
フレンチトーストをそこまでして食べたいとは思わないし。
少し濡れたり風邪をひくのだって、気にしないの。
だから本当に、帰りたくは無かったのだわ。

……だって、みんな最近“見えるもの”の話ばかりでしょう?
石碑とか、難破船とか、救助要請とか。私、見えないもの。
見えないから、何をどうしたらいいかなんて、ちっとも分からないの。

そんな風に楽しくしている所に、私って邪魔だわ。


「………………………」


──そういう特別なものって何かしら。
私ね、随分前にそれをあげてしまって、それからずっと。

考えようともしなかったの。
考えるのすら怖いから。

私が変わってしまったみたいで。

不安で怖くてたまらなくなって、どうしようもなくなるのよ。



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