Eno.101 アストラペの黄金駆動

黄金で象られし異本

ああ、何もかもが――赤く染まっていく。
やめろ、やめてくれ。
オレたちから青い空を奪わないでくれ。

「……また、あの夢か。」

「縁起でもねぇよ、こんな時に」


……あの青を、いつかは取り戻さなきゃ。
"オレ"という存在がまだ"原典"オリジナルから分かたれる前からずっと追いかけていた、あの綺麗で無垢な青い空を。

それは、オレの"原典"オリジナルから持つ、限りなく本能に近い衝動だ。
今のオレをも突き動かすこの力が――
望みに近い形に実ることを信じて、いずれは再び戦いに身を投じるのだろう。


……ここからは、難しい話をしよう。
これを読む者が深みに嵌らないように、
ここではあえてまどろっこしくしているが、許してくれ。


いつしか"原典"オリジナルから枝分かれし、
"新しい物語"となったオレは、今はオレ自身の"原典"オリジナルを守るために生きている。

というのも、"原典"オリジナルが生まれた世界に、著しい時空の乱れが発生した。
その時空の乱れの中で偶発的に生まれたのがオレだ。

"黄金"と呼ばれるその物質は、
"原典"オリジナルが生まれた世界――竜機世界『ドラマギアス』の歴史を癌のように蝕んでいる。
それも、オレの"原典"オリジナルが生きているよりも過去の時代からだ。

このままでは"原典"オリジナルにも歴史改変の影響が波及することは避けられない。
そこで、竜機世界が持つ独自の時空の性質を利用することにした。

時に枝分かれし、時に収束する性質を持つドラマギアスの時空性質。そして別の世界で枝分かれした"原典"オリジナルのデータの断片の数々。
これらを辻褄合わせをする形でひとつの"異本"コピーとなり、オレは生まれた。

オレは"原典"オリジナルから独立して存在できているが、
それは「自分自身を"よく似た別の存在"として再定義した」オレの工夫があってこそ。
全く同一の存在がそのまま出会えば、待っているのは対消滅のみだからだ。

ともかくこうして、オレはいる。
"原典"オリジナル『カヴネル・レビン』から分かたれ、
彼女、すなわちオレ自身の物語を守る存在として。