無題
「………」
嵐の夜。決まって、この時間帯に拠点を抜け出して森へと向かう。誰の目にも留まらないように、こっそりと。
手にはナイフと、灯りと、…生きた命。目的の場所に着いたのならば、誰も来ていないか再度後ろを確認する。来ていない。
「………」
伐採された木の幹をテーブルに見立て、命を置く。雨風に晒されようとも、これはまだ温かい。ふわふわの毛。ひくひくさせる鼻。なんて愛しいのかしら。
「………」
無感情に、ナイフを突き立てる。何度も、何度も。溢れる*は激しい雨が流してくれるから、何も怖くない。
消えゆく命が、わたしを見る。きっと『どうして』と語っているだろう。
「…、…」
そうして、また1つ、消えていった。あとは、羯磨さまが調理しやすいように、要らないところを省いていくだけ。
(ああ、……安心する。)
自分には、まだこの力が残ってる。まだ*すことが出来る。何も怖くない、恐ろしいものが来ようとも、わたしは、対抗できる。
(だって、もう、"弱い私"じゃないのだから。)
雨の中、不意に口角が上がる。足りない。もっと*したい。もっと、もっと…