思い出
シカが岩風呂優勝者の賞品だっつって
メシのリクエスト権をくれた
全部美味そうだったが……
一品、特に惹かれる物があった
牡丹鍋
ずっと前に一度だけ食った事があったモンだ
確かにイノシシは何度も取ってきたが
焼肉だけじゃなくて牡丹鍋まで作れるとはな
シカは本当に器用だ
これが本当旨くてよ、何より臭みが少ねぇ
無人島で道具もすくねぇ中
きっと色々手間隙かけてくれたんだろうな
前食ったのよりもずうっと美味かった
前食った時は確か傭兵で雇われた時だったか
色んな場所を渡り歩いて、色んな人に出会って
そん中でもそん時の依頼主がケチでよ
傭兵は街の外で野営しろって
まぁそこまでは良い
けどよ
飯代もねぇ、テントもねぇ
街から見えねぇトコまで下がれ、だと
金で雇われるきたねぇ俺たちは人じゃねェと
お前らはそこら辺の獣と一緒だと
ムカついたが大体偉い奴らは皆そうだ
文句言ったら報酬が減らされるだけだ
だから俺達は耐える
耐える為に森の拓けた場所で暖を取り合った
森で取れたのがイノシシで、それを鍋にした
そん時に牡丹鍋ってモンを教えてもらった
「本当は此処に野菜が入るんだ」
「本当は味噌で味付けもするんだ」
「海藻で煮込むのもあるらしい」
そう言いながらイノシシをぶつ切りにして
味付けは少しの塩だけで
鍋にぶち込んで水で煮た
多少の臭み、なんてもんじゃなかった
もう獣の匂いしかしなくて
塩なんか全然意味のないくらいだった
しかも肉は硬くて、生煮え
正直、まずかった
そん時は俺以外はみんな歳上の野郎だったが
特に問題は起きなかった
寧ろ皆、孫みてぇだ、娘みてぇだ、息子みてぇだ
……って可愛いがってくれた
俺はこんな格好してるし、でも動きづらいのは
嫌だからやめねぇけど、やっぱそういう奴もいる
だからいつも殴って解決してた
殴ってもダメなら腕を折った
腕がダメなら足を
足がダメなら……………
…俺ぁバカだからよ、力でしか解決できねぇんだ
力がねェと、生きられねぇ世界で生きてきた
俺を拾って育ててくれた人が、そう教えてくれた
"私"が生きていた価値観じゃ生きていけない
だから
野郎に負けない様にしよう
力が強いならそれを磨こう
口調もしおらくちゃ舐められる
睨む練習もしよう
喧嘩も負けねぇように
酒だって飲んで飲まれねぇように
髪は……
髪、は………
母上の銀の髪
父上の血が滲んだような紅の髪
これくらいは、残してもいいだろ?
そうやって粗削りして
弱いところは叩いて
折れそうになったら叩き直して
"私"は"俺"になった
そん時は周りなんかもう信用できなくて
全員敵だ、信用しちゃなんねぇ、みんな獣だ
実際に襲われた事もあったろ
俺は俺だけ信じていりゃ良い
俺は一人で良い
なんて、思ってたんだ
そん時の野営での夜は最悪だった
夜風は寒いし、地べたはかてぇし、飯は不味かった
…………けど、暖かかったんだ
愛想もクソもねぇ俺にかわいいだのいい子だの
自分らも腹減ってるだろうにもっと食えって
不味い飯を食わせて、暖かい上着を着せて
人も、飯も、目から出た汁も
全部、アホみたいに優しくて暖かかった
…………………本当は、寂しかったんだ、俺
そんな事を今日のメシで思い出した
シカの作ってくれた牡丹鍋はあったかくて、うめぇ
きっと、これが本物なんだろう
あん時の野郎達が言ってたのと似てる
島の皆も笑って飯を食っている
あん時の野郎達もバカみたいに騒いでた
リルのねぇちゃんと一緒に飲んだ酒はうまかった
あん時も寒さを凌ぐために少しの酒を皆で分け合った
臭くない牡丹鍋、分け合った酒
少し状況が違うが………
ここも、全部、暖かくて、優しい
……………あん時の仲間は、半分以上死んだ
疲れてた、傷ついてた、腹減ってた、喉が渇いてた
ちっとだけ、今の状況に似ている
大切だと思える存在がまた出来たんだ
今度はぜってぇ守る、守んなきゃいけねぇ
また失ったら心が持たねぇ
忘れねぇ、忘れらんねぇ
野郎達のことも、この島のやつらも
皆が生きて帰る
これは俺の自己満だけど、絶対叶えてみせる
母上の様に優しく、父上の様に強く
そこまでいかなくても、俺はやってみせる
やるんだ、やらなきゃいけねぇんだ
メシのリクエスト権をくれた
全部美味そうだったが……
一品、特に惹かれる物があった
牡丹鍋
ずっと前に一度だけ食った事があったモンだ
確かにイノシシは何度も取ってきたが
焼肉だけじゃなくて牡丹鍋まで作れるとはな
シカは本当に器用だ
これが本当旨くてよ、何より臭みが少ねぇ
無人島で道具もすくねぇ中
きっと色々手間隙かけてくれたんだろうな
前食ったのよりもずうっと美味かった
前食った時は確か傭兵で雇われた時だったか
色んな場所を渡り歩いて、色んな人に出会って
そん中でもそん時の依頼主がケチでよ
傭兵は街の外で野営しろって
まぁそこまでは良い
けどよ
飯代もねぇ、テントもねぇ
街から見えねぇトコまで下がれ、だと
金で雇われるきたねぇ俺たちは人じゃねェと
お前らはそこら辺の獣と一緒だと
ムカついたが大体偉い奴らは皆そうだ
文句言ったら報酬が減らされるだけだ
だから俺達は耐える
耐える為に森の拓けた場所で暖を取り合った
森で取れたのがイノシシで、それを鍋にした
そん時に牡丹鍋ってモンを教えてもらった
「本当は此処に野菜が入るんだ」
「本当は味噌で味付けもするんだ」
「海藻で煮込むのもあるらしい」
そう言いながらイノシシをぶつ切りにして
味付けは少しの塩だけで
鍋にぶち込んで水で煮た
多少の臭み、なんてもんじゃなかった
もう獣の匂いしかしなくて
塩なんか全然意味のないくらいだった
しかも肉は硬くて、生煮え
正直、まずかった
そん時は俺以外はみんな歳上の野郎だったが
特に問題は起きなかった
寧ろ皆、孫みてぇだ、娘みてぇだ、息子みてぇだ
……って可愛いがってくれた
俺はこんな格好してるし、でも動きづらいのは
嫌だからやめねぇけど、やっぱそういう奴もいる
だからいつも殴って解決してた
殴ってもダメなら腕を折った
腕がダメなら足を
足がダメなら……………
…俺ぁバカだからよ、力でしか解決できねぇんだ
力がねェと、生きられねぇ世界で生きてきた
俺を拾って育ててくれた人が、そう教えてくれた
"私"が生きていた価値観じゃ生きていけない
だから
野郎に負けない様にしよう
力が強いならそれを磨こう
口調もしおらくちゃ舐められる
睨む練習もしよう
喧嘩も負けねぇように
酒だって飲んで飲まれねぇように
髪は……
髪、は………
母上の銀の髪
父上の血が滲んだような紅の髪
これくらいは、残してもいいだろ?
そうやって粗削りして
弱いところは叩いて
折れそうになったら叩き直して
"私"は"俺"になった
そん時は周りなんかもう信用できなくて
全員敵だ、信用しちゃなんねぇ、みんな獣だ
実際に襲われた事もあったろ
俺は俺だけ信じていりゃ良い
俺は一人で良い
なんて、思ってたんだ
そん時の野営での夜は最悪だった
夜風は寒いし、地べたはかてぇし、飯は不味かった
…………けど、暖かかったんだ
愛想もクソもねぇ俺にかわいいだのいい子だの
自分らも腹減ってるだろうにもっと食えって
不味い飯を食わせて、暖かい上着を着せて
人も、飯も、目から出た汁も
全部、アホみたいに優しくて暖かかった
…………………本当は、寂しかったんだ、俺
そんな事を今日のメシで思い出した
シカの作ってくれた牡丹鍋はあったかくて、うめぇ
きっと、これが本物なんだろう
あん時の野郎達が言ってたのと似てる
島の皆も笑って飯を食っている
あん時の野郎達もバカみたいに騒いでた
リルのねぇちゃんと一緒に飲んだ酒はうまかった
あん時も寒さを凌ぐために少しの酒を皆で分け合った
臭くない牡丹鍋、分け合った酒
少し状況が違うが………
ここも、全部、暖かくて、優しい
……………あん時の仲間は、半分以上死んだ
疲れてた、傷ついてた、腹減ってた、喉が渇いてた
ちっとだけ、今の状況に似ている
大切だと思える存在がまた出来たんだ
今度はぜってぇ守る、守んなきゃいけねぇ
また失ったら心が持たねぇ
忘れねぇ、忘れらんねぇ
野郎達のことも、この島のやつらも
皆が生きて帰る
これは俺の自己満だけど、絶対叶えてみせる
母上の様に優しく、父上の様に強く
そこまでいかなくても、俺はやってみせる
やるんだ、やらなきゃいけねぇんだ