Eno.360 ツバキ

ある狼の日記3

昔から血の匂いには敏感だった。
隠していても、匂いで怪我をしているのは分かった。


以前俺を治療してくれてた先生はいつも言っていた。


「小さな傷でも、其処から細菌が入りゃ身体中に広がって不調を起こす。

腕や足が壊死する時もあるし、最悪死に至る…いいか、少しの傷でも甘く見るんじゃねぇ」


…此の島の環境はお世辞にも良いとは言えない。
ある程度設備も整ってきたけど、それでも…縁を結べた人達がそうなってしまったら?

俺が不調を見逃して…もし、もし…


…怖かった。
誰にも死んでほしくなかった。


……でも、そればかり考えすぎて、周りが見えていなかったのかもしれない…。

押し付けて、逆に傷付けた…ごめんなさい、赤いお兄さん。



俺なんかが関わらなくても、皆十分強いし、生きようとしてる…分かってるんだ…。


俺は元々壊す側で、俺こそ人以下の、獣以下の扱いを受けてきて…きっと、これからも受けていく…。
だから、先生みたいに、ちゃんとした治療なんて出来るような知識は…俺にはなくて…。




……皆…ごめんなさい…。