Eno.14 神崎 考希

神崎の手記(必要だと思ったモノ)

倉庫にあるモノの整理と補充を終えて荷物の山に戻った。
次は追加の花火でも作ろうかと思っていたが、疲れを感じたので睡眠を取ることにした。
“安眠効果”のある花を傍に置いて横になる。
いつでも眠れそうだ。この絶大な効果を発揮している贈り物には本当に感謝している。
……………………贈り物?

俺、色々貰っておいてニシュに何も返せてないな!?

いつでも眠れそうだと思っていたが、目が冴えた。必要なモノに気が付いたからだ。
治療のお礼にと貰ったモノだが、
俺は二度目の嵐の時に準備を整えず、飛び出しそうになった所を止めて貰っている。
治療と命の危機で釣り合っていないのは勿論理解出来るが、
それを踏まえた上でも俺の方が多くのモノを貰っている。
“対等な関係”である為にはこちらも何かを返さなければならない。
睡眠が取れていない事を察して渡してくれたであろう
特殊な製法で作られた花の事から、相手が欲しいモノについて考える必要がある。

ニシュが喜ぶモノを考える為には、
彼女が楽しそうにしていたり喜んでいた時の事を思い出すのが良いだろう。

倉庫に補充用の網が不足していた時に、ロープを作り、
もう少しで網が完成すると喜んでいたな……
確実に違うなこれ。しかもあの時、ちょうど網不足に気づいた俺も作っていて、
製作を終えていた俺が3つ補充したんだった……
それを聞いて彼女は少し残念そうにしていたと思う。次の案。

ソリ遊びの時は喜んでいたように思う。贈り物がソリ遊び?
特殊な製法で作られた花に近い形で返せないと“対等”とは言えない。
贈り物は無形ではなく“作ったモノ”であるべきだ。次の案。

アヒル……アヒルかー、やはりそうだよな……作るのか、アヒル。
樹脂の加工はこの島であまり現実的では無いから同様のモノは作れない。
……それ以外のアヒルであればどうだろうか。荷物の山、木と石と布と鉄。

ぬいぐるみだ。アヒルのぬいぐるみ。

早速、作業を開始した。アヒルの全長は種類にもよるが1.5mから30cm。
全長30cmのアヒルにしよう。自立出来るように重心に気を付け、
接地面を広く取る事によって安定感をつけよう。
あまりにも好調であった。好調過ぎてすぐにそれは出来上がった。
これでようやくニシュと“対等”な関係になる為に最低限必要なモノが出来た。

完成したアヒルを見ながらふと、冷静になる。
これは必要なモノではなく“俺に必要なモノ”であった。
贈り物をこちらも贈る事によって“対等”を目指すという行為は
俺に必要だった事であり、私用で資材を使ってしまったのだ。

そういえば、当初は疲れを感じたから寝ようとしていたのだ。
これ以上、何か選択を間違える前に一度寝よう。
資材を使ってしまった申し訳無さで眠れなくなると思っていたが、
こんな時でも“安眠効果”のある花の効果は絶大であった。

起床後、そこにはデカいアヒルが自立していた。