...夜の中...
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ニシュプニケは決して、己を聡明だとは思いませんし、ましてや優しい等とも思いません。
それでも『大人びているから、相談をしたくなる』だとか。
『人の事を良く見ていて優しくて、何だか落ち着く』だとか。
──そういった類の言葉を、良く聞くのでした。
特別という言葉は、本当に特別なものなのよ。
遠い遠い昔にたった一度捧げたそれを、今も握りしめるくらいには。
特別で。価値があって。大切で。真摯に受け止めなくてはならないものなの。
それは暖かいようで冷たくて、尖ってはいないのに丸くもない。
心地好いようで泥濘で、小鳥に施すクリッピングに似ていた。
ニシュプニケは優しい場所だけを分けて貰った、幸運な子供でした。
しかしそれで過去が変わる訳ではありません。
ニシュプニケは決してそれを忘れたいとは思いませんでした。
稚拙な愚かさが、誰かの首を酷く締めてしまった事を。
ぬいぐるみを貰ったの。
“対等”になりたくて。“喜ぶ顔”が見たくて。
私はそんなつもりであげたのではないわ。
そんな風になりたかったわけでもないわ。
対等なんてどうだって良くて、喜んでもらいたいとも思わなくて。
香りは共有出来る、私の見る世界の切れ端で。
その時の彼に必要なものだった。

見えなくても分かる、少し歪む顔に私は私を見るの。
そうね、喜ぶべきだったのだわ。物に罪は無いのよ。
勿論、あなたにも無いけれど。
とても子供な人なの。とても拙い人なの。そして欲しがりな人なの。
昔々の私と同じ人なの。
ニシュプニケは泣かない子供でした。理由は簡単です。
必要の無い瞳に残された、酷く無様な機能だったからです。
ニシュプニケは弱音を吐かない子供でした。理由は簡単です。
周囲にそれ程心を許さず、頼る糸を持たないからです。
──独りだからです。
それは昔と変わらず、臆病なけものの咆哮。
誰しももう、裏切られたくはないでしょう。
裏切りたくも、ないでしょう。
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