Eno.635 シュリ

子供は苦手だ。
なまじ同じ言葉を使うからかもしれない。
下手に相手をしても泣かれたり暴れられたりする。
結局は放っておくか、飴でも与えて追いやるかだ。

別の者に頼めるならそれが一番いい。
これまでの経験から、またこの島での様子を見ても。

***

船の完成は近い。
脱出、帰還もより現実味を帯びる。
となれば、この姿のまま戻るわけにはいかない。
母星に立てば中央に把握されるのは致し方ないが、
捕縛の手が伸びる前に身をさらして歩くのは愚かしい。

縫製技能を展開して布を裁つ。
極力シンプルな型紙パターンを選んでも、
機械がないので切るにも縫うにも時間がかかる。
それでも手仕事自体は考えずともできるし、
その間に考えるべきことは山のようにあった。

***

我が身の潔白を示し、名誉を回復する。
己が背負ったあらゆる名がそれを求める。
当然のことだ。我が主のため、我が家のために。

幼子だけが言えるのだ。
「帰りたくない」「ここにいたい」と。