ここへいたるまでの兎
お墓のまえで、兎はひとつきほどの時間を、まるまってすごしました。
お墓にねむる人の孫から食事をもらいながら、ずっとそこにいました。
ほんとうは、兎はだれがそばにいなくとも生きていけるのです。
だって、こんな牙と爪のおおきな生きものは、兎ではありませんから。
牙と爪とおおきな体で、なんでも解決できる、かいぶつなのですから。
けれど、出会ってしまったから。
ぬくもりを覚えてしまった生きものは、もうかいぶつにはなれません。
けれど、出会ったから。
ぬくもりを覚えた兎は、うずくまることをやめて、歩きだせるのです。
お墓の土に、兎は鼻先をつけて、土のしたの匂いをかぎました。
お墓にねむる人がのこした、刺繍いりの荷物袋をせおいました。
そして、おせわになった人に毛むくじゃらの手をふって、旅立ちます。
お墓にねむる人が、さいごにのこした言葉にこたえるように、元気に。
おいしい料理をわけあってきました。
いくらかの知識をおそわってきました。
背中をあずけられて、たたかうこともありました。
月がのぼる時間はともにねむりました。
太陽がのぼる時間だっていっしょでした。
ずっと。ずっと。おわりがくるまで、ずっと。
ながい時間のぬくもりが、兎をときにさびしくさせます。
ながい時間のぬくもりが、兎にひとりでも歩ける元気をあたえます。
それにおそわった知識が、兎をひとりきりのかいぶつにさせません。
牙や爪をもったおおきなけものは、怖がられることもありましたが。
むやみにふるわないならと、なかよくしてくれる人だっていました。
だから兎は、力づよく歩いていけます。走っていけます。
たいせつな荷物袋をせおって、どこまでも、どこまでも。
ある日の兎はなんだか魚がたべたい気分。
そうして兎は、海にとびこんだのでした。
おいしいものをもとめて、元気よく!
お墓にねむる人の孫から食事をもらいながら、ずっとそこにいました。
ほんとうは、兎はだれがそばにいなくとも生きていけるのです。
だって、こんな牙と爪のおおきな生きものは、兎ではありませんから。
牙と爪とおおきな体で、なんでも解決できる、かいぶつなのですから。
けれど、出会ってしまったから。
ぬくもりを覚えてしまった生きものは、もうかいぶつにはなれません。
けれど、出会ったから。
ぬくもりを覚えた兎は、うずくまることをやめて、歩きだせるのです。
お墓の土に、兎は鼻先をつけて、土のしたの匂いをかぎました。
お墓にねむる人がのこした、刺繍いりの荷物袋をせおいました。
そして、おせわになった人に毛むくじゃらの手をふって、旅立ちます。
お墓にねむる人が、さいごにのこした言葉にこたえるように、元気に。
おいしい料理をわけあってきました。
いくらかの知識をおそわってきました。
背中をあずけられて、たたかうこともありました。
月がのぼる時間はともにねむりました。
太陽がのぼる時間だっていっしょでした。
ずっと。ずっと。おわりがくるまで、ずっと。
ながい時間のぬくもりが、兎をときにさびしくさせます。
ながい時間のぬくもりが、兎にひとりでも歩ける元気をあたえます。
それにおそわった知識が、兎をひとりきりのかいぶつにさせません。
牙や爪をもったおおきなけものは、怖がられることもありましたが。
むやみにふるわないならと、なかよくしてくれる人だっていました。
だから兎は、力づよく歩いていけます。走っていけます。
たいせつな荷物袋をせおって、どこまでも、どこまでも。
ある日の兎はなんだか魚がたべたい気分。
そうして兎は、海にとびこんだのでした。
おいしいものをもとめて、元気よく!