Eno.637 楠木・R・ルーシー

禁煙6日目、その3

嵐が明けた。凄まじい暴風はなく、かと言って晴れ間もない曇天。…かえって丁度いい気候だ。



──今まで出来ていた事が出来なくなる
──今まで当たり前だったものが、当たり前ではなくなる
──今まで死ぬことが無かった存在が、倒れる寸前まで体を酷使する

いつだったか、この島を特異性を封じると仮定したが、それは誤りだったんだろう。

……恐らくこの島は、流れ着いた漂流者を、一般人相当に落とし込む力を持っている

無理をするな、と言ったところで。この身体が何処からが無理かも分かるわけがなく。
安静に、といったところで。何処までが安静の範疇も異なる。
言語が同じとはいえども常識の定義が異なる。それ故に、確執や喧騒、仲違いが起きていたんだろう。


…とはいえ、だ。すでにこの島に流れ着いてから6日。シマの時間ではなく体感で言うなら、既に結構な時間経っていると思われる。
それだけの期間があっても、未だ自分の身体について理解が無いのであれば、私としても実力行使に出るしかない。
今までは患者との合意、インフォームドコンセントを終えてから治療行為に及んでいたが、もう必要はないだろう。

誰がなんと思おうが、知ったことか。偽善者なら、偽善者らしく振る舞うだけだ。

二人共もう一人前の医者だしね。二人に任せるのは少し心苦しいけど……余計な事は考えずに済む。