Eno.483 辰砂

無題

楽しいことがあるみたい。楽しみだ、それは。

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夏祭りだった。
そこかしこからイカの臭いがしてちょっとキツいが、
聞こえてくる喧騒も、皆も、楽しそうだからそれでいっか。
ぼんやり眺めてると、段々日が落ちて、気持ちのいい風が吹いてくる。

書き置きがあって。
あの子──昨晩の子の。
突き放すなら、中途半端な善意なら断ろうかとか、見なかったことにしようかと少し考えたけど。
よく良く考えれば俺の事情なんて知らないだろうし。

そう考えると彼に当たってしまったのは自分かなとか思って。

きちんと話をした。
なんだかスッキリした。
この話の落着が──と言うより、自分の中で何かがつっかかっていたから。

だから祭りを楽しもって話を、あの子とした。


お祭りはいい。
お面をつけていれば、素顔も出自も人種も何もかも、誰も彼も変わらず等しく平等に、何にも阻まれず遊べるんだ。

子供だってはぐれちゃうわけだ。


だってこんなに楽しいんだから。