Eno.496 キリン

思い出の夏祭り

いくつかの国を回った先で、とても楽しげな祭りを見たことがあった。甘い飴や美味しいご飯を食べれる屋台や遊べる屋台、軽快なリズムに大きな火花。道行く人はいつもと違った服装で、それぞれ家族や友人と和気藹々と楽しんでいた。

ボトルメッセージに書かれていた文書によれば、この島が沈むのはそう遠くないだろう。
だから、助かっても助からなくても、楽しい思い出を残しておきたかった。

夏祭りの準備に取り掛かったのは数日前。1人でやろうだなんて無謀な事を考えていたので準備は遅い。その間にも勿論皆のお腹は空くし、料理を欠かすことはできない。やはり人手は必須だった。
最初に声をかけたのはレックス君。夏祭りの話をすると喜んで協力してくれた。彼にはメニュー考案の手伝いと、いくつかの串焼きの調理、そして宣伝の手伝いをおねがいした。あのメガホンの声量は凄かったな、屋台で頑張る姿も素敵だった。
次に声をかけたのはリケル君。花火を作ろうとしているのを見て声をかけた。急なさそいだったがこちらのスケジュールにあわせてくれて、花火も沢山打ち上げてくれた。レルヒェさんも辰砂君もまた違った色合いの花火を用意してくれて、会場は大いに盛り上がったに違いない。
そして最後は、騙す形にはなってしまったが皆だ。
アタル君とウィロウさんにはかき氷のシロップを沢山絞ってもらったし、獅子谷君やスシさんにも足りないものを取ってきてもらった。リェンロンさんは罠の回収をしてくれたおかげで祭りまでの食材には困らなかったし、レト君やジズさんは水汲みを頑張ってくれて。藍菊さんのお酒と思い込む水には少し笑ってしまったが、料理には水が欠かせないので本当に助かった。
リルデアさんはひょっこり現れては足りない穴を埋めてくれた。皆が動けない時に動ける存在というのは、この島で大きい。
シャロル君は倉庫拡張や拠点の充実に沢山携わってくれたな。おかげで沢山の材料をこっそりしまっておけた。
ツバキ君は傷ついた皆を手当てしていたな。体調が悪いと楽しい事だって半減してしまうし、何より生存に関わるからね、私の気づかなかったところだ。
ルナさんは……長靴を食べていた印象が強すぎる……けど、いつも大漁な様子は凄く逞しかったし頼り甲斐があった。

ふむ。こう考えると私がした事はそんなにないかもしれない。
けれど、楽しめたのなら、それでいいか。