Eno.759 随聞記

最後の手記

私は鎌倉時代に生まれた。

撰集抄が一節、西行於高野奥造人事
遺骸から人を造る外法、神秘の秘術。

人から鬼になる事を恐れながらそれを成そうとした人間が
術を知る人物から見聞きした事柄を詳細に取りまとめた、
世に出ることはなく隠し持たれ、
840年、使われることのなかった随文記。

それが私だ。

故に私は遺骸から救う術しか知らなかった。
生きている人間の心とやらがわからなかった。
私を震えた文字で書いた人間の苦悩や恐れを理解しなかった。

この島で人の命、人の心を知り、
私を書いた人間もただ、誰かを救いたい
という願いだけは本物だったのだと知る。

人になれるのなら、私は人を生かす生き方をしたい。

そう、心から願い船に乗ろう。