Eno.316 鶴岡 星良々

わたしはわたしの理想になれてたんだ

夏祭りの前、ミナくんに呼び出された。
贈り物があるって。

花火大会の準備とか料理の仕込み、島先生の曲の作詞、色々立て込んでいて、手紙に気づくのが遅くなってしまったけれど、わたしはミナくんに言われた場所へと向かった。

すごく綺麗な浴衣だった。
フリルのあしらわれたレース生地の羽織と、百合の花の刺繍と貝殻を削った飾りがついた、淡藤色のグラデーションが上品な、綺麗な浴衣。
ミナくんが全部作ったんだって。凄いよね。プロみたいだ。

「いずもりクンに、勇気をくれて、ありがとう。今のいずもりクンがあるのは、せららチャンのおかげなんだって」

まったく、何森くんのことでこんな本格的なお礼をするなんて。
ミナくんは何森くんのこと、とっても好きなんだろうなぁ。

でも、もし本当にわたしが、何森くんを変えることができていたのなら。
何森くんを勇気づけることができたのなら。
それは、わたしのアイドルとしての理想で、目標で、夢だったから。

ーーだから夢が叶ったことが嬉しくて、この浴衣を身に纏えば、『理想の鶴岡せらら』になれた気がした。

わたしはミナくんのことも、何森くんのことも好きだ。もちろん、友達としてだけど。ファンでもクラスメイトでもある2人のことが。
だから、わたしはアイドルとしても、友達としても、二人のことを応援したい。

応援させてよ。
背中を押させてよ。
だって、それがわたしの生きがいだから。

『偶像』は本来人を選ばない。
いかなるファンにとっても、同じくらい『特別』にわたし達は映ってる。
そんなわたしが、本当の意味で誰かを『特別』に思ったんだと思う。

貴方達のおかげで、わたしも理想になれたから。
貴方達が変われたみたいに、わたしも変われたから。

だから、たとえ他のファンを敵に回してでも、わたしは貴方達の幸せを応援し続ける。

高校生は、クラスメイトのことを特別って思っていいんだよ?



「結局、ミナくん、来なかったなぁ……
せっかくスペシャルライブやったんだけどなぁ」