Eno.14 神崎 考希

神崎の手記(想像以上の忙しさ)

島は今、脱出を想定した時に必要だと判断される“脱出キット”製作に追われていた。
あぁ、俺この忙しさ知ってるわ。
新技術や新素材を誰かが発見した時に研究室がこんな感じになってた。

倉庫やコンテナの空きの確保や不足物の補充も今までの増減量とは比べ物にならず、
それに加えて“脱出キット”という今まで手を付けていなかったモノ作り。
流石に手が追いつかなくなってきた。

空きの確保と補充をひと段落出来る程に済ませた俺は
早速“脱出キット”製作に取り掛かる為、書き置きの再確認を行った。
……そこには“保存食”という項目が記載されていた。
“保存食”って具体的にどういったモノだ?
この島には大人や子供、そもそも人間以外の仲間たちがいる。
その条件に合わせた上で、どの程度の船旅を想定した量を
どういった種類の食材で用意すれば良いのだろうか。

分からん。皆目見当もつかん。

みんなは“保存食”を完成させつつ“脱出キット”を続々と作っている。
“保存食”作りに取り掛かろうとしない俺を見かねてか、
葉山がそれの作り方について教えてくれた。
燻製された肉を切り分けるらしい……それでも全く分からない。

今までこの島で焼くという行為のみで料理をしてきた。
他の料理は必要なモノが多すぎて作れないと判断したからだ。
計量カップや、細かな火力調整、例を挙げだすとキリは無いのだが、
とにかく俺はこの島で料理らしい料理が出来ない。
魚を焼いた時でさえ、ペットボトルと砂を使い即席で作った砂時計や
火が均等に通りやすい角度を何度も調整して作っていた俺が、
調理器具が大量に必要な料理を作れるハズも無かった。

話を戻すが、燻製された肉の切り分けだ。
これは大人や子供、未知数の高い人間以外の仲間たちに適した量を
理解出来なければ切り分けられるはずがない。

狼狽しているとルーシーに“脱出キット”に必要な革やベルトの加工を頼まれた。

実質、料理に関する事の戦力外通告を受け、素直に従う事にした。
うん……俺もその方が良いし、確実に正しいと思う。
俺は“保存食”の代わりに必要なモノをとにかく人数分になるよう作る事にした。