Eno.574 三河 元忠

事の始まり③

7/8昼 例の動物病院

獣医さん:「三河 元忠くーん」

今度は当たり前ながら、呼ばれても何も起きず……
数十分で健康診断も終わる。

獣医さん:「元忠君、すごく元気ですね。
若い猫ちゃんよりも元気なくらいですよ。」

「ナーオ」(ほらね~)



澪:「いつもこの子元気だとは思ってますけど、獣医さんにお墨付きが貰えるほどなんですね。」

半年以上私の体内にいたから、何か変化や悪影響があるかも知れないと思ったけど、健康そのもの。手を取り合って喜ぶ……が。

「この調子で行けば、20歳も十分狙えると思いますよ。」

澪:「20歳だって。元忠、元気でいようね~」

「ナー」(もちろん~)



少々わざとらしく、一人と一匹ではしゃいでみせる。
獣医さんはあくまで健康な元忠を褒めてくれているのだ。

獣医さん:「それじゃあ、お大事に~」

澪:「はーい、ありがとうございました。」

にこやかに動物病院を出る。

澪:「………」(それでも)

「………」(20歳かぁ……)


20歳が寿命、と言うわけではないにせよ。
一般的な飼い猫が『天寿を全うした』と言われるのは15歳。20歳で大往生。




澪の部屋に帰って、静かに元忠を抱えて、夕飯まで時間を過ごす。

澪:「ご飯……あのフード、入れる?」

「ナー」(うん……)



猫の寿命、悩んでもどうしようもない事なのは分かっているけど……こうして時々、そのことを考えては少しの間塞ぎ込むことがる。


しばらく元忠に触れてメンタルを回復させて、夕飯時。

元気にシニア猫向けフードを食べる元忠を、
ご飯を食べながらしきりに元忠の姿を確認する澪を。

お互い横目で見ながら、同じことを考えていた。

澪:(もっと長く、一緒に居られないかなあ……)

(もっと長く、一緒に居られないかなあ……)



その瞬間。

澪:「え……元忠?元忠!?

餌皿と水皿と一緒に、忽然と元忠の姿が消えた。