神崎の手記(救助船)
夜が明けて陽が差し始めた頃、“脱出キット”の追加生産を行う為に
各々が出来る事を進めて行こうとしていたそんな時、
その事実は、メガホンを使用した大きな声という形で島中に届いた。
『船が来ている。装備が無くても乗れる程の用意がある』
俺は全身の力が抜けるような感覚と共に、その場に倒れこんで天を仰いだ。
島の存在と俺達がそこに居るという事実は、確かに外に届いていた。
俺達は島で生存しながら救助という細い糸を手繰り寄せる事が出来た。
感情的な部分で言えば大声を出してしまいたい気分だった。
でも、今はみんなの前だ。そんな事は出来ない。
きっと、島に来たばかりの俺や“特別”の意味に気づけなかった時の俺には
決して辿り着けない達成感であったと言えるだろう。
救助が来たという事は、みんなで島から脱出できる。
俺の“本当の望み”の為に“特別”な人に会わなくては……
彼女は今、漂流船に物資調達へと出ていたハズだ。
戻って来てすぐは疲れているだろうから、話の約束だけして後で改めて伝えよう。
そういう風に考え始めていた頃、それを知ってか知らずか
彼女は島中に届いた知らせを聞いて戻って来た。
彼女に話の約束をしようと思い、その姿を見れば
傷だらけなのに全くそれを気にせず救助の知らせを喜んでいたようだった。
俺は彼女に拒まれる結果になったとしても、まずは治療が必要だと思った。
治療が必要だと“理解”出来て、拒まれて傷つく事になると“思っても”
それをするべきだと判断したから。
予想に反して彼女は素直に治療に応じてくれた。
これには少々驚く事になったし、治療の後に
最も治療が得意なルーシーに任せるべきだったと自分の行いを思い返す事にはなったが、
彼女の傷を癒せた事実だけあれば良いと思った。
俺は彼女に、伝えたい事があるから
疲れたであろう今では無くて構わないからそれを聞いて欲しいと言った。
彼女は“今でもいい”と言ったので俺はその時に伝える事にした。
「『島から出てもニシュの傍に居たくて、みんなで島から脱出したい』
俺がこの島で過ごして気が付けた。“本当に望むモノ”だ。
ニシュの“傍に居たい”」
これは感情的なだけではなく、理論的な部分も含んだ“両方の面”を持つ望みだ。
誰に聞かれようが構いはしない。
彼女はしばらく笑顔を見せながら沈黙を作ると
俺の名を呼んだ後に、しっかりとこう答えた。
「そういう事をハッキリと言ってしまえる
あなたは素敵だけれど、私目立つのは好きじゃないわ」
…………俺はまさか謝罪を口にする事になるとは思わなかった。
彼女は、後でゆっくり聞くからとだけ告げ、俺はそれに同意するしか無かった。
俺はどうやら彼女を怒らせる天才らしい。
拠点に居たみんなはそれを笑ったり、何とも言えない表情で見ていたりしたが、
笑い事なんかではない……俺はこの後、確実に怒られるんだぞ。
それからしばらくして、救助船にみんなも持って行きたいモノがあるだろうと考え
預かっていた荷物の山からいくつか倉庫に移してそれをみんなに伝えた。
追加で欲しいモノがあるなら作るし、俺に出来そうな事なら力を貸すとも伝えた。
倉庫を確認する人達が多くいる中、おうじさんが特にないと口にしたのを聞いた。
俺は島にいるみんなの事が好きだし、救助船に手ぶらというのも
欲しいモノを持って行く人達と差が生まれるから何かするべきだと考えた。
おうじさんは王子だから王冠を贈ろうと考えた。
今までも敬称として、さん付けをしてきたのも不敬になるかもしれないと
考えての事だし、王冠の形をした物であれば材料が多い今なら作れる。
俺はそう考えて彼に“王冠”を作って渡した。
モノ作りには自信がある。この島で多くのモノを作って来たから。
彼はそれを受け取ると被ってみせ、嬉しそうにしている様に見えた。
それを見て、今ここに居る人達から順にモノを作って贈ろうと考えた。
次に贈ったのはシジリだ。拠点増設の時に世話になっている。
俺は“大黒柱と彫った太い枝”を渡した。
これはシジリが家に関する生業をしていると聞いていたから
御守りとして持っていて貰おうと考えてのモノだ。
まさか本当にデカい柱を渡す訳にもいかないしな……
シジリは最初こそ困惑していたが、
俺の説明を聞くと大切にすると言って、それをジッと見ていた。
次はテンメイだ。彼は俺と同じく科学や発明といった分野に精通する者だ。
色々と悩んだが彼には“火起こし器”が良いだろうと考えた。
火は文明の第一歩となる物。俺は共に島の文明を進める事が出来た事への
感謝の言葉と共にそれを贈った。
彼はそれを眺めると、摩擦熱で火を起こしていた初日の事を思い出すと言った。
その後、彼も俺という科学者と過ごせた事が楽しかったと伝えてくれた。
次に近くに居たのは葉山だった。彼は大型の蒸留器を作り上げた者だ。
……蒸留器はデカすぎるよな。
彼には水に関するモノが良いだろうと考え、水を貯められる“陶器”を贈った。
それを受け取ると彼は、早速水でも汲んで来ようかと楽しげにしていた。
次は誰に贈ろうかと考えていた時、メガホンを使って叫ぶ声が聞こえた。
『聞こえてても聞こえなくてもいい。
全員休んだ後、星を見る為に布材を集めてくれ!』
全く意味は分からなかったが、
どうやら俺が好き勝手にモノを作れる状況ではなくなったようだ。
星を見る為に布が必要? それが“欲しいモノ”なんだな?
俺はモノを作る事には自信がある。ちょうど伝えたい事も伝えて、
何名かには贈り物も出来て調子が出てきた所だ。
――俺は“星を見る”というモノを作る事にした。
各々が出来る事を進めて行こうとしていたそんな時、
その事実は、メガホンを使用した大きな声という形で島中に届いた。
『船が来ている。装備が無くても乗れる程の用意がある』
俺は全身の力が抜けるような感覚と共に、その場に倒れこんで天を仰いだ。
島の存在と俺達がそこに居るという事実は、確かに外に届いていた。
俺達は島で生存しながら救助という細い糸を手繰り寄せる事が出来た。
感情的な部分で言えば大声を出してしまいたい気分だった。
でも、今はみんなの前だ。そんな事は出来ない。
きっと、島に来たばかりの俺や“特別”の意味に気づけなかった時の俺には
決して辿り着けない達成感であったと言えるだろう。
救助が来たという事は、みんなで島から脱出できる。
俺の“本当の望み”の為に“特別”な人に会わなくては……
彼女は今、漂流船に物資調達へと出ていたハズだ。
戻って来てすぐは疲れているだろうから、話の約束だけして後で改めて伝えよう。
そういう風に考え始めていた頃、それを知ってか知らずか
彼女は島中に届いた知らせを聞いて戻って来た。
彼女に話の約束をしようと思い、その姿を見れば
傷だらけなのに全くそれを気にせず救助の知らせを喜んでいたようだった。
俺は彼女に拒まれる結果になったとしても、まずは治療が必要だと思った。
治療が必要だと“理解”出来て、拒まれて傷つく事になると“思っても”
それをするべきだと判断したから。
予想に反して彼女は素直に治療に応じてくれた。
これには少々驚く事になったし、治療の後に
最も治療が得意なルーシーに任せるべきだったと自分の行いを思い返す事にはなったが、
彼女の傷を癒せた事実だけあれば良いと思った。
俺は彼女に、伝えたい事があるから
疲れたであろう今では無くて構わないからそれを聞いて欲しいと言った。
彼女は“今でもいい”と言ったので俺はその時に伝える事にした。
「『島から出てもニシュの傍に居たくて、みんなで島から脱出したい』
俺がこの島で過ごして気が付けた。“本当に望むモノ”だ。
ニシュの“傍に居たい”」
これは感情的なだけではなく、理論的な部分も含んだ“両方の面”を持つ望みだ。
誰に聞かれようが構いはしない。
彼女はしばらく笑顔を見せながら沈黙を作ると
俺の名を呼んだ後に、しっかりとこう答えた。
「そういう事をハッキリと言ってしまえる
あなたは素敵だけれど、私目立つのは好きじゃないわ」
…………俺はまさか謝罪を口にする事になるとは思わなかった。
彼女は、後でゆっくり聞くからとだけ告げ、俺はそれに同意するしか無かった。
俺はどうやら彼女を怒らせる天才らしい。
拠点に居たみんなはそれを笑ったり、何とも言えない表情で見ていたりしたが、
笑い事なんかではない……俺はこの後、確実に怒られるんだぞ。
それからしばらくして、救助船にみんなも持って行きたいモノがあるだろうと考え
預かっていた荷物の山からいくつか倉庫に移してそれをみんなに伝えた。
追加で欲しいモノがあるなら作るし、俺に出来そうな事なら力を貸すとも伝えた。
倉庫を確認する人達が多くいる中、おうじさんが特にないと口にしたのを聞いた。
俺は島にいるみんなの事が好きだし、救助船に手ぶらというのも
欲しいモノを持って行く人達と差が生まれるから何かするべきだと考えた。
おうじさんは王子だから王冠を贈ろうと考えた。
今までも敬称として、さん付けをしてきたのも不敬になるかもしれないと
考えての事だし、王冠の形をした物であれば材料が多い今なら作れる。
俺はそう考えて彼に“王冠”を作って渡した。
モノ作りには自信がある。この島で多くのモノを作って来たから。
彼はそれを受け取ると被ってみせ、嬉しそうにしている様に見えた。
それを見て、今ここに居る人達から順にモノを作って贈ろうと考えた。
次に贈ったのはシジリだ。拠点増設の時に世話になっている。
俺は“大黒柱と彫った太い枝”を渡した。
これはシジリが家に関する生業をしていると聞いていたから
御守りとして持っていて貰おうと考えてのモノだ。
まさか本当にデカい柱を渡す訳にもいかないしな……
シジリは最初こそ困惑していたが、
俺の説明を聞くと大切にすると言って、それをジッと見ていた。
次はテンメイだ。彼は俺と同じく科学や発明といった分野に精通する者だ。
色々と悩んだが彼には“火起こし器”が良いだろうと考えた。
火は文明の第一歩となる物。俺は共に島の文明を進める事が出来た事への
感謝の言葉と共にそれを贈った。
彼はそれを眺めると、摩擦熱で火を起こしていた初日の事を思い出すと言った。
その後、彼も俺という科学者と過ごせた事が楽しかったと伝えてくれた。
次に近くに居たのは葉山だった。彼は大型の蒸留器を作り上げた者だ。
……蒸留器はデカすぎるよな。
彼には水に関するモノが良いだろうと考え、水を貯められる“陶器”を贈った。
それを受け取ると彼は、早速水でも汲んで来ようかと楽しげにしていた。
次は誰に贈ろうかと考えていた時、メガホンを使って叫ぶ声が聞こえた。
『聞こえてても聞こえなくてもいい。
全員休んだ後、星を見る為に布材を集めてくれ!』
全く意味は分からなかったが、
どうやら俺が好き勝手にモノを作れる状況ではなくなったようだ。
星を見る為に布が必要? それが“欲しいモノ”なんだな?
俺はモノを作る事には自信がある。ちょうど伝えたい事も伝えて、
何名かには贈り物も出来て調子が出てきた所だ。
――俺は“星を見る”というモノを作る事にした。