Eno.645 ヴィクトル・トート

報告11

No.14より、


これは別に、ただ思っただけだから、届かなくていいやつ。

この世界には引力っていうものがあるらしい。
一般的な科学の話とは少し違う。アリアドネの奴らが言っていた話だ。
近い位置にあるものには、どんなに微弱であろうと、互いに引き合う力が存在する。
一応、これを正しいことだとしておく。

逆に言えば、引き合わせられたもの同士は、元々近い位置に存在している。
……っていうことになるらしい。
これが正しいとすれば、たとえどれほど無関係に見えるものでも、
偶然集まっただけに見えるものでも、必ず元々は近い位置に存在していたと言えるのだという。

ややこしい話だけど、要するにたまたま流れ着いたこのシマも、このシマにいる奴らも。
僕が知らないだけで、元々そう遠くない、近い位置にあった可能性があるっていうこと。
ここで言う位置っていうのは、時間や空間を超越するものらしい。
だからどんなに近くても、直接接触することは不可能である可能性も残っている。

確かにここには、たまたま流されたって言う割には、知り合いらしい奴らが随分多い。
偶然では有り得ない確率だろう。
僕は、自分は関係ないと思っていたんだけど、知らないだけで、そうじゃないのかもしれない。
たまたま知らないだけなのか、それとも何か見えない繋がりがあったのか。
或いは本当に僕の知りようのない、『向こう側』の関係に起因するものなのかもしれない。
だけど必ず何かがあるから、僕はそこに辿り着くんだって言っていた。
それが何なのかを知ることは、なかなか難しいみたいだけど。

何が言いたいかっていうと、そういうことなら、今の僕と一番繋がりが深いのは一人しかいないってこと。
だからまあ、どうにか、帰ることは出来ると思う。
船の準備も出来ているし。後は無事に沖に出られるか、アリアドネが動くか次第。
もうすぐ戻るよ。
お土産持って帰るから、大人しく待ってろ。