Eno.737 オオワ=シズ

断片~記録の切れ端~


この島に来て、違和感を覚えたことはほかにもある。
【お腹がすく】のだ。それだけでなく【喉も乾く】し【疲れる】。
まるで、ふつうの、ほかの命と同じように。

大陸にいたころは、こんなことはなかったのに。
だけど、これが【ふつう】なのだろう。
どうやら、この島、あるいは世界にいる限り。
わたしはほかの命と同等のようだ。


【飢え】というものは辛いもの。
それは以前から【知っている】つもりだった。
だから、わたしは、命たちを飢えさせないように、力をもっていた。
しかし、いまはそうすることもできず、わたし自身が【飢え】を知ることになった。


私の本質は、命たちを飢えさせないため。
もし、この島にいる人たちが飢えてどうにもならなくなったときは。
わたしは喜んでこの身体を【贄】にするだろう。
それで、彼らの苦しみが癒えるのなら。
私は本望だ。


ところが、そうも言えなくなってしまった。
まさか、レトくんやツバキさんたちも流れ着くなんて。

もし、この島が初めて会う人ばかりだったなら。
わたしはわたしを捧げてもいいと思っていた。
だが、そうしたら親しい友人たちである彼らは? どう思う?
それ以前に、そう切り出したら、島の他の人たちはどんな気持ちになるだろう。

残される人の気持ちと、その先をもう一度考えた。
わたしはどうすればいいのだろう。