Eno.122 春海 日雀

夢七夜(と、現のあわい)

こんな夢を見た。
波打ち際で寸刻まどろんでいたら、知らない浜へと打ち上げられていた。
そこに、地上では終ぞ見覚えのない姿かたちや暮らしぶりのひとびとを見て、私は知らず頬をつねったのであった。

この短くも奥深い波打ち際での日々は、未だに信じがたいけれど……。
どこまでも夢のように思える、現の出来事であったらしい。

探り探りの手で寝床や食料をかき集めた第一夜。
分け合う事や手を広げること、少しずつ暮らしを歩み始めた第二夜。
吹きつける雨風を外に聞きながら、炎を囲んで語り合った第三夜。
まだ残る熱気に、風を求めながら横になった第四夜。
互いの故郷の話に花を咲かせていた第五夜。
久々のアルコオルを嗜みながら、島での食事に夜を明かした第六夜。
そして、少しずつ満ちる潮に爪先を浸しながら、この言葉を並べている、第七夜。

いつも夢とも知れない世界を見て、語るばかりの私の脳は、いくらか頼りないけれど。
連ねても連ねても、幻みたいなこの日々のことを。

私が確かに覚えている限りは、現であってくれないだろうかと、願う。



「この目で見る景色や出来事のこと……
 現実であってくれなんて思ったことは無いんだけどな」


「ここでの日々はどうしてか、
 夢だったら少し寂しいと思うね」



「……素敵な友人が、沢山できたからかな?
 これまでは親切な隣人なんて、そう多くは無かったからねえ」