Eno.318 ミュステ

カノンペル村にて・始

砂時計にも似たかたちの奇妙な隆起が、青空の中にそびえている。

天辺は草木にまみれ、汗のようにツタを垂らしている。
緑はくびれにまで至り、こぶを形成している。鳥たちはあたりまえのように飛び回り、巣を作る。

そこから下は、ごく普通の山。
ふもとに目をやってみれば、町もある。

ここは魔族の世界、アル=ゼヴィン。
墜ちた島々がそこかしこに突き刺さった大地。


―――*―――*―――*―――

釣り人
「うおっほう!」


砂時計を見据える位置にある山。
その頂の湖で釣りをしている男がひとり。
手繰り寄せた糸の先には、耳のようなヒレをつけたナマズが一尾。


釣り人
「久方ぶりにいいネコナマズだ、オレもツイてきた……」


ほくほく顔でネコナマズをびくに収める男。
が、ふと、ザッザッ。後ろの茂みが踏み荒らされる音がする。

すわ野獣か、と警戒をしたら、現れたのはウニ頭の男、それと。


ウニ頭の男
「……そこの」


釣り人
「へい……!?」


まだ音がやまない。
ザザッザザッ。さらに後ろから、四つの足が踏み荒らす。

現れたのは、青と白の毛皮のドラゴンの仔。
首輪をしているが、縄はない。


首輪をされた仔竜
「……」


釣り人がぽかんと口を開けていると、ウニの男は彼を見下ろして言う。

ウニ頭の男
「川沿いに村があると聞いたんだが」


釣り人
「村……ああ、カノンペル村ですかい。
 それだったらそっちの踏み均されてる道を行きゃあ、今からなら日暮れまでには。
 ってか、その竜の仔、どこで……」


ウニ頭の男
「すまんな。じゃあ」


ウニ頭の男は仔竜とともに、釣り人の指した方へ歩き去っていった。