藤柳門
人とは違う姿。異形の者。あるいは同じ姿であっても異なる力や知識を持つ者。
それらは時折、門の向こうから現れた。
門と言っても、鳥居の形に似たもので、その「あちら」側を異界と呼び、そこから現れる者は客人、あるいは客神と呼ばれている。
都の四方にあるそのうちの一つは、藤柳門と名付けられていた。
藤の様に紫色の葉の柳が茂る場所だからである。
異界に近しい場所は、そのように不可思議な事が起きる。
その門を守る家系に生まれていたからだろうか。この島に来て、人と違う見た目の者に驚かなかったのは。
親しく話した事はないけれど、そういう存在が『在る』という事は知っていた。
そして客人達は名の通り、使い方によっては富となる物や知識をもたらす。
だからこそ、その門を守る門司や蔵を守る蔵人は、欲をかかない清廉さが求められた。
***
船を作り終え、謎の解明をし、さて自由な時間を、となったところで、特にしたいことが思い浮かばなかった。
思えばこの島に流れ着いてからというもの、必要だから木を伐り、必要だから魚を釣り、必要だから水を汲んでいた。その繰り返し。
自分のしたい事、という望みが、そもそも存在しなかった。
倉の中にある物を持ち帰りたければ、と言われて、それもまた、欲しい物が思い浮かばなかった。
ただ一つ、御守だけは持ち帰りたかったが、これも自身の手元に置きたいという理由ではない。
自身が望んでいるのは、欲しい物は、昔からずっと、一つだけだった。
その唯一が手に入ったのであれば、それ以上、もう望むことはない。
全てを、懸ける事が出来る。
それらは時折、門の向こうから現れた。
門と言っても、鳥居の形に似たもので、その「あちら」側を異界と呼び、そこから現れる者は客人、あるいは客神と呼ばれている。
都の四方にあるそのうちの一つは、藤柳門と名付けられていた。
藤の様に紫色の葉の柳が茂る場所だからである。
異界に近しい場所は、そのように不可思議な事が起きる。
その門を守る家系に生まれていたからだろうか。この島に来て、人と違う見た目の者に驚かなかったのは。
親しく話した事はないけれど、そういう存在が『在る』という事は知っていた。
そして客人達は名の通り、使い方によっては富となる物や知識をもたらす。
だからこそ、その門を守る門司や蔵を守る蔵人は、欲をかかない清廉さが求められた。
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船を作り終え、謎の解明をし、さて自由な時間を、となったところで、特にしたいことが思い浮かばなかった。
思えばこの島に流れ着いてからというもの、必要だから木を伐り、必要だから魚を釣り、必要だから水を汲んでいた。その繰り返し。
自分のしたい事、という望みが、そもそも存在しなかった。
倉の中にある物を持ち帰りたければ、と言われて、それもまた、欲しい物が思い浮かばなかった。
ただ一つ、御守だけは持ち帰りたかったが、これも自身の手元に置きたいという理由ではない。
自身が望んでいるのは、欲しい物は、昔からずっと、一つだけだった。
その唯一が手に入ったのであれば、それ以上、もう望むことはない。
全てを、懸ける事が出来る。