>prologue
「それで、捜索は打ち切りってどういうことッスか」
「それで、それで良いんスか!! 仮にも私たちは仲間だったでしょう!!
それをたった、たった一週間だけでそんな決めつけ、無いじゃないッスか……!」
◆◆◆
――私は、誰よりも不出来だとかは思ったことない。
言っちゃあ何だけど人よりは優秀な頭を持ったと思うし、その分の努力もしてきた。
驕りじゃなくて自信。
だけれど私には、憧れる人がいた。
私よりも圧倒的な才能と信条を以て、より多くの者の為に先見へ至る瞳を持った人。
普段は大雑把で適当で、何考えてるかもわからない突飛な思考をしてその上で後を鑑みない、癖に変なところが抜けていて一番の核心だけは突いてくる人。
私は、あの人のことを一番に知っている。
……知っていました。
未来観測生体機構……ある時点での未来に於いて、如何なる事象が起きているかを観測させる異能者を管理し、機構にまで落とし込んだモノ。
私たちの間では通称『Kosmos』と呼ばれるそれの維持運営・事象観測班チーフ。嘗てシュパーズ・レープハフトと呼ばれた彼の捜索は打ち切られた。
以降、私の独断で個人的な探索も続けていたものの、成果ナシ。
結局は上層部の判断同様、『実質的死亡者』として処理した結果が間違いではないことを日増しに実感させられた。
今では彼の代わりに私が‶代理‶チーフとして現場を纏めているものの、やや力不足であることは否めない。
ネヌ
「それでも、私は諦めねえッス」
これは偏執じゃない、きっと。
ただ『より多くの為に』、チーフの掲げるそれに則って希望を捨てていないだけ。
あの人の存在はそう簡単に失っていいものじゃあない筈だから。
そう藻掻いて、藻掻いて、徒労を得て、弾丸を穿つ。
そんな中。
ネヌ
(……これは、)
夢を見た。
全く知らない場所。果てのない水の上に浮かぶ建造物、それに私は凭れている。
きゅ、と誰かに手を握られている感覚がして、それが誰か見ようとしたけれど目が上手く開かない。
口を動かそうとしても喉はカラカラで、身体はびっくりする程重たくて。

ネヌ
(これは、何?)(――ッ!!)
見せられているそれが何だったのかはわからなかった、けれど。
握る手が滑り落ちると同時、意識ごと身体が沈む感覚がしたのだ。
溺れている。
夢の筈なのに、水の中で溺れている。……あまりにリアルな感覚。
大体の人間はいきなり水中に放り込まれればパニックに陥るものだから、私も例によって暴れ、どうにか水面の光を見つけ顔を出し。
ネヌ
「……」
ネヌ
「……な、」
そこは何処までも続く果てのない水に、大地と言うには心許ない『島』。加えて土の天蓋が存在しない筒抜けの青い空。
ずぶ濡れで重い身体が沈んでしまう前にどうにか水を掻き分けて白くてサラサラした砂の上に立つ。
口の中に入った水の所為で塩辛くて、思考は今の状況に全く追いつかなかった。
けれど。
間違いないのは、もう既に夢の中ではないということ。
この島で、私は生きなければならないということだった。