Eno.14 神崎 考希

神崎の手記(冷えた頭で君を想う)

氷室で頭を冷やした事が功を奏したのか“感情的な部分”も落ち着いた。
それを理解しても尚、あの時に取るべきだった行動は分からない。

――島から出る時も近い。今はみんなで島から出られるという事実を喜ぼう。

ニシュに俺が“本当に望んでいるモノ”についても既に伝えたし、
今まで向き合う事が出来なかった事にも、この島で向き合えた。
その事実さえあればいい。

この島には様々な仲間達がいる。
話の内容からも、俺の過ごしていた世界と違う所から来た者が多い事も理解している。
ニシュもその内の一人だ。
彼女の耳や尻尾は、俺と同じ世界から来ていない事の証明だった。
島から脱出して、みんながそれぞれ元居た世界に戻るのが避けられないのであれば、
そもそも俺の“本当に望んでいるモノ”が叶う事が無いのもとっくに理解していた。

もし、仮に例の船でも一緒に居れば、どちらかの世界で共に居られるのかもしれない。
それはその時になるまで分からないし、確かめようの無いモノだった。
……彼女が“俺と一緒に居たい”と思っているのかも分からない。
俺は既に“伝えた”から後はその返事を待つだけだ。
例え、島から出る時までその返事が来なかったとしてもそれを認めるつもりだ。
彼女には数えきれない程の恩義がある。
俺の知る他の言葉では言い表せない、まさしく“特別”としか表現出来ない人だ。
様々な想いを一つの言葉で表すにはそれしか当てはまらない。

――だから、伝える事が出来た時点で、この島でするべき事はもう済んでいた。



冷えた頭と体のまま拠点へと戻る。
理論という砦もしっかりと機能していると思う。
不安定になりかけた“感情”を“理論”でしっかりと安定させる。
そもそも理論を抜きにして話さなければいけない状況は
ニシュという“特別な”存在を相手にしていたから生まれたモノだ。
他の誰にもそれを悟らせない程、理論という嘘には自信がある。
むしろ、この理論という嘘が他の人にも見破られた時、
俺にとっての“特別が、特別では無くなってしまう”ような怖さがあった。
だからそれを手放す事は決して他の人の前で“あってはいけない事”だった。

水汲みも兼ねて救助船の様子を見る事にした。
実際に乗ってみて状況確認出来るのがベストだ。
いくらかの荷物を持って砂浜へと移動を開始した。

船の乗り降りは現在自由に行う事が可能で、島へ戻る事も容易に出来た。
それを確認した後、水を汲み拠点へと舗装された道を辿る。
まだ星を見て無いからな……折角ならどういう風にそれを行うのか知っておきたい。
布材を集めてこいとしか言われていなかったから、
何をどうするつもりなのか見当もつかないからな……



拠点に再び戻ると、ロンとエポラがキノコの密輸を行っていた。
現行犯である。