*『現実』
中学に上がるタイミングで、パパが死んだ。発砲事件に巻き込まれたらしい。
私が復讐心を抱く間もなく、犯人はその場で射殺された。
パパの実家はブラジルのリオ・デ・ジャネイロで、祖母と二人で暮らしていた。
私は、息子を失った祖母を慰める役割で、リオの地を踏んだのである。

「結局、なんで私にアメリカ大統領の名前を付けたのか。
まあでも、奴隷解放で有名な人だし、芸名っぽくなる以外は嫌いじゃないな」
そこから、決定的に何かがおかしくなったように思う。
私は、私の精神と身体を守るため、スポーツに没頭した。
パパが日本に来るきっかけとなった柔術は、こちらではグレイシー柔術と言った。
髪の毛を掴まれないように、私は伸ばしていた髪の毛をばっさり切り捨てた。
……
大場てくのと私は、小学校が同じの、いわゆる幼馴染だった。
彼女も、他の子と比べるとなかなかエキセントリックな性格だったので、
特に仲が良かったのを覚えている。

「小学生顔負けの、なにやらすごい実験?をいつもしてんだよな~。
中学は、私が第二の故郷に行ってたから
離れ離れだったけど、高校でまた出会えて嬉しかったあ~」
高校で出会った彼女は、あまり身長は伸びていなかったが
確かに大人びた感じがした。近づくと石鹸のいい香りがした。
実験の方は、相変わらず何をしているのかさっぱりだったが、なんとなく面白かった。
たまに、友達……否、助手として付き合ったりもした。
「じつはあの時、キムワイプの中身を鼻セレブにすり替えた犯人は私だったんだ……」
ふざけて肩に手を伸ばすと、あまりに華奢なのでびっくりする。
飯を食えと口癖のように言ったが、寝る間さえ惜しむ人なのであまり効果はなかった。

「かわいいな~~、てくのは!
肌が白くて、背も小さくて。同じクラスの三も、負けじとかわいいんだが」

「…………てくの。私は───」