悲報、
──そうだな。
それは過去の振り返りになってしまうから、あまりに記憶が曖昧なことであり。
確実性に欠けている。
こう言ったことは主観のもと書かれるべきではなく、外側にいた人の視点から書かれるべきなんだ。
当事者が語るべき事柄ではないんだ。
それに当事者ではあるけれど、その時の自分は何も思っていなかった。
何も思っていなかったから、へいきであることを留意してほしい。
他人によって書かれるべきことに、自分の視点を入れている。
だから最良とは言えない。
最良とは言えないが。
語り手は俺がしようか。
◇ ◇ ◇
それは多分よく晴れていた日のことだったとおもうのだが。
まあ天候までは覚えてない。ちゃんと“目”で見ていたのだけれど。
昔の話だから。まあ忘れるのも。
あと、見えていたのは人々の姿。
きちんと色がなった形で見えていた。
その時の自分はというと、ただただ、考えていた。
計算をして考えている。
その上で“今がその時”であると判断していた。
発射までには時間がかかるようだった。
彼らがやってきた。
簡単なセレモニー。
ぐだぐだと進んでいく。
どちらかと言えば飲み会のノリ。
お疲れ様でした会。
それらが済んで終えばあとは見上げられていた。
それが打ち上がるのにカウントダウンをしていた。
10から1まで数えるようなノリ。
彼らの仕事は済んでいる。
それを作り終われば、後は“1番いい時に打ち上がる”だけだから。
待っている。当てにさえしている。
必ず “それ”が どうにかしてくれる。
自分たちはあとはいい感じの水と、空から持ち込んで育てている植物を噛んでいれば。
それでよかった。
彼らは間違いはなかった。
とかくそれは考えていた。
最善と最良と周りと何もかもをクリアしようとしていた。
完璧を何事においても求められる。
それが目覚めてから爆発するまでの存在理由であるのだから。
だからそれだけを考えている。
星を滅ぼすための最良を計算し尽くしている。
それに向かうための、それに向かうための、それに向かうための。
もともと別の機械なのだから、計算は思ったよりもへたっぴなAIだった。
10からようやくカウントが始まった。
9が来た時には上を見上げている。
8がこれば、星が瞬いていた。
7で空が眩しくて目を細めている。
6で有り合わせで作ったことを思い出す。
5でエンジン音がうるさく耳に届き始めた。
4で少し休み。それは一気に飛び立つための力を貯めている。
3で期待に胸を膨らませた。
2で空から降ってくるであろう、残骸に対して壁を展開している。
1で、
誰かが小さく叫ぶ声。
1で、その軌道に、よくある流れ星が来ているのに気がついた。
──終末の鐘を鳴らしましょう!
それは、予定時刻ちょうどに発射された。
打ち上げ台、というほどの立派なものではない。
高く高く聳え立っていた宇宙エレベーターの空洞に、弾丸を詰めるよう。
それを大砲と見立てている。
花火の打ち上げのように。
大砲で球を打つように。
──月世界旅行に行ってらっしゃい!
地上では、もうすでにこんな悲鳴が上がっている。
いいや、歓声の大サービスだろう。
一度引いた引き金がたまらないことなんて知っているでしょう。
責任を放棄したのに弾丸なんか持ち続けているから暴発するんだ。
それでも彼らに責任はないと、口にしている。
超高速の音と、煙の軌跡だけが、地上に残った。
◇ ◇ ◇
「…………」
「それで、落ちましたの?」
──ああ、おちた。
全くもって簡単な話。
それはそれとぶつかって、そのまま地上に落ちていった。
いく途中で燃え尽きなかった。
地上近くまで降り立ったと思えば。
壊れていた頭は止まらない。
──閃光と熱風と、轟と。
それらが、水の星にもたらされた。
「………」
「それでも人は滅ばなかったのかしら〜」
それは一瞬口を結んでいた。
ああでも、黙ってたっていいことがない。
沈黙の後。
──ああ、その通り。
星も人も滅ばなかった。
星は確かに、地面が抉れた。半分くらいの領域は完全にダメになった。
その星は欠けてしまった。
でも、星はそれでも回っているし。
逃げ延びた星の人達が、少しだけいた。
細々と暮らして、最後の代を迎えて。
二度目の終末兵器の発動、ようやく滅んだと言う。
それを知ったのは、島に流されてから、あなたの記録が教えてくれたのだ。
やになった。やになるという気持ちを持つと思っていなかったけれど。
何もかもが滅ばなかった。
終末を何に対してももたらすことができなかった。
「………」
「あなた、何事もやり遂げることができなかったのですわね」
──情けないことに。
情けないことに。
情けないことに。
何も成し遂げられていない。存在意義を考えている。
「うふふ」
「終末をもたらされなかった終末兵器、ただ爆発だけして、その星に攻撃したのに、それすらもできなくて」
「この島に流れ着いている」
「あなたは何が目的なのかしら」
それは少女の影と声で尋ねている。
細い指で指さして、喉元を焼いてくる。
そんな夢ばかり見ていた。
◇ ◇ ◇
それは、海に沈み込んだ終末兵器の残骸と。
落ちてきたことによって殺されてしまった水の星の人々の怨嗟の声と。
あともうひとつ、その星の、未来の海が流れ込んでいる。
複数が入り混じって、成立している。
真夏の亡霊だ。