Eno.582 メロウィア

郷愁に駆られて

間もなく島が沈むと言うのに、
いつまでもうだうだと荷物の整理をしてしまう。

可能な限り思い出のものを残して出立したい。
だと言うのに、こんなちっぽけなリュックサックでは、
持ち帰りたいものの三分の一も入りはしない。
悩ましい。物凄く悩ましい。

水底へ沈む名も無きこの島は、
一体何処へと行き着くのだろうか?

定かでは無いけれど、
その後を見守りたい気持ちが無いと言ったら嘘だろう。

ふと、紺碧の海から『帰ろう』と言う声が聴こえた気がした。
ああ、そうだ、帰らなければならない。
踵を返し、私は船へと荷物を持ち込む。


帰るべき場所が、陸に待ち受けている。