冒険の記録
この島にやってきてすぐに、森で素材をかき集めてひとまず暑さを凌げそうな拠点を作った。
今にも溶けそうになりながら日陰に入っていったルプティムローノさんと、巣が貧相だと少し不満げだったツヴァイツィヒさんのことを覚えている。
それから、スノウミさんに名前をもらった。困難に打ち克つ願いが込められている、らしい。俺がその名前に見合うだけの動きができたかは分からないけど、少なくとも皆、最後まで笑顔でここを出られた。
生きていくために必要な水を集めるために、太陽光で海水を蒸留する道具をジアさんが作っていた。他の星から来ているのに、流れ着いていたサバイバルブックから必死に作る姿。ツヴァイツィヒさんがそれを真似て同じものを作っていて、きっと、あの辺りから身を寄せ合った緩やかな交流と協力が始まった。
サンカイさんとルプティムローノさんが倉庫を建てて、皆がお互いの持ち物を融通できるようになると、スノウミさんとヒエンさんが罠を作って設置した。魚とお肉。健康に生きるために欠かせない食料の調達が、より本格的になった。
料理はヒエンさんやツミキリさんが特に上手で、美味しいものをたくさん振舞ってくれたな。ジアさんの星の料理も、興味深い味わいだった。
ツヴァイツィヒさんが自分の羽を燃やして作った大きな火は、雨や嵐で途切れることはあったが小さな火を灯してやればすぐにその勢いを取り戻して、最後まで俺たちの側を明るく照らしてくれた。それから、窯や石臼もツヴァイツィヒさんが作ってくれた。
本格的に食事が充実し始めると、皆少しずつ冒険心を抱くようになっていった。目指したのは、海で隔てられたもう一つの小さな島。遠目からでも植生が異なるその島に行くために皆で資材を集めて橋を作って、光栄にも俺がそれを架ける役を担わせてもらった。
新しい島へ向かう先遣隊はスノウミさんとヒエンさん、俺だった。やたらとたくさんキノコが生えていて、帰還したらビーチェさんがキノコ落とし場を作ってくれていた。……そういえば、皆普通にキノコ食べてたけど、結局誰もキノコに寄生されたりはしなかったな。……なんかちょっと怪しい症状は見かけたけど。
スノウミさんが置いてくれた書き置きのノートは、ビーチェさんの虹色ペンで目がチカチカするくらい彩られていた。誰が書いたのかわからない楽しげな文字や絵。それから、フローティングさんが残してくれていた木材納品の報告。木材はいくらあっても足りないから、本当に助かっていた。お礼を言い足りないくらいに。
それから、ユピターさんが岩風呂を置いた。蒸し暑くて汗をかく中でゆっくり浸かれる風呂は本当にありがたかった。それに、水に浸かっていないと渇いてしまうマイナさんが拠点で過ごせるようになったのも嬉しいポイントだった。
ビーチェさんが森に狩猟小屋を置いて罠にかかるのを待つだけじゃなく狩りをできるようになったり。ツヴァイツィヒさんが灯台を立てて、夜になると真っ暗になるこの島を照らしたり。ルプティムローノさんが念願の涼しい小屋を建てたり。一歩ずつ暮らしが良くなって、それにあわせるように賑やかになっていった。
嵐やその後にやってきた猛暑も、壁や氷室のおかげで乗り越えられた。やがて嵐で流されてきたらしい大きな船に乗り込んで、中に残された食べ物を使って、皆それぞれの故郷の味を表現しようとしていた。終いには大砲まで持ち出して、花火を空に打ち上げたりして。
そして、海の水位が上がって、砂浜がその面積をじわじわと減らし始めた頃に救助船が来た。
最後だからと丸一日かけたパーティが始まって、各々作った食べ物を振る舞い、花火を打ち上げて、ビーチェさんは記念にと皆をかたどった石像なんかを作っていた。
それから俺も何かできないかと、倉庫の素材を捏ね回しているうちに──『冒険の記録』ができた。
不思議な石が素材を凝縮して、ペンがひとりでに走り出してできたアレを、俺はそう呼ぶことにした。あれは俺じゃなく、素材を集めてきたここにいる全員で作ったものだから。
空に掲げると淡く輝いて、星が挽かれた粉のような光になって辺りに落ちた。ただそれだけなのに、その光は今も瞼を閉じればすぐそこに見える。
美味しいものをたくさん食べた。
知らない世界をたくさん見れた。
不思議な話をたくさん聞けた。
それを何一つ忘れたくないからずっとこれを書いていたけど、この島に遺していく石像と、俺がこの先も持っていく光があれば、もうその心配はいらなさそうだ。
俺は、この先も俺として。
勇者じゃなくても、この島で過ごしたヤドリとして、きっと冒険を続けられる。
今にも溶けそうになりながら日陰に入っていったルプティムローノさんと、巣が貧相だと少し不満げだったツヴァイツィヒさんのことを覚えている。
それから、スノウミさんに名前をもらった。困難に打ち克つ願いが込められている、らしい。俺がその名前に見合うだけの動きができたかは分からないけど、少なくとも皆、最後まで笑顔でここを出られた。
生きていくために必要な水を集めるために、太陽光で海水を蒸留する道具をジアさんが作っていた。他の星から来ているのに、流れ着いていたサバイバルブックから必死に作る姿。ツヴァイツィヒさんがそれを真似て同じものを作っていて、きっと、あの辺りから身を寄せ合った緩やかな交流と協力が始まった。
サンカイさんとルプティムローノさんが倉庫を建てて、皆がお互いの持ち物を融通できるようになると、スノウミさんとヒエンさんが罠を作って設置した。魚とお肉。健康に生きるために欠かせない食料の調達が、より本格的になった。
料理はヒエンさんやツミキリさんが特に上手で、美味しいものをたくさん振舞ってくれたな。ジアさんの星の料理も、興味深い味わいだった。
ツヴァイツィヒさんが自分の羽を燃やして作った大きな火は、雨や嵐で途切れることはあったが小さな火を灯してやればすぐにその勢いを取り戻して、最後まで俺たちの側を明るく照らしてくれた。それから、窯や石臼もツヴァイツィヒさんが作ってくれた。
本格的に食事が充実し始めると、皆少しずつ冒険心を抱くようになっていった。目指したのは、海で隔てられたもう一つの小さな島。遠目からでも植生が異なるその島に行くために皆で資材を集めて橋を作って、光栄にも俺がそれを架ける役を担わせてもらった。
新しい島へ向かう先遣隊はスノウミさんとヒエンさん、俺だった。やたらとたくさんキノコが生えていて、帰還したらビーチェさんがキノコ落とし場を作ってくれていた。……そういえば、皆普通にキノコ食べてたけど、結局誰もキノコに寄生されたりはしなかったな。……なんかちょっと怪しい症状は見かけたけど。
スノウミさんが置いてくれた書き置きのノートは、ビーチェさんの虹色ペンで目がチカチカするくらい彩られていた。誰が書いたのかわからない楽しげな文字や絵。それから、フローティングさんが残してくれていた木材納品の報告。木材はいくらあっても足りないから、本当に助かっていた。お礼を言い足りないくらいに。
それから、ユピターさんが岩風呂を置いた。蒸し暑くて汗をかく中でゆっくり浸かれる風呂は本当にありがたかった。それに、水に浸かっていないと渇いてしまうマイナさんが拠点で過ごせるようになったのも嬉しいポイントだった。
ビーチェさんが森に狩猟小屋を置いて罠にかかるのを待つだけじゃなく狩りをできるようになったり。ツヴァイツィヒさんが灯台を立てて、夜になると真っ暗になるこの島を照らしたり。ルプティムローノさんが念願の涼しい小屋を建てたり。一歩ずつ暮らしが良くなって、それにあわせるように賑やかになっていった。
嵐やその後にやってきた猛暑も、壁や氷室のおかげで乗り越えられた。やがて嵐で流されてきたらしい大きな船に乗り込んで、中に残された食べ物を使って、皆それぞれの故郷の味を表現しようとしていた。終いには大砲まで持ち出して、花火を空に打ち上げたりして。
そして、海の水位が上がって、砂浜がその面積をじわじわと減らし始めた頃に救助船が来た。
最後だからと丸一日かけたパーティが始まって、各々作った食べ物を振る舞い、花火を打ち上げて、ビーチェさんは記念にと皆をかたどった石像なんかを作っていた。
それから俺も何かできないかと、倉庫の素材を捏ね回しているうちに──『冒険の記録』ができた。
不思議な石が素材を凝縮して、ペンがひとりでに走り出してできたアレを、俺はそう呼ぶことにした。あれは俺じゃなく、素材を集めてきたここにいる全員で作ったものだから。
空に掲げると淡く輝いて、星が挽かれた粉のような光になって辺りに落ちた。ただそれだけなのに、その光は今も瞼を閉じればすぐそこに見える。
美味しいものをたくさん食べた。
知らない世界をたくさん見れた。
不思議な話をたくさん聞けた。
それを何一つ忘れたくないからずっとこれを書いていたけど、この島に遺していく石像と、俺がこの先も持っていく光があれば、もうその心配はいらなさそうだ。
俺は、この先も俺として。
勇者じゃなくても、この島で過ごしたヤドリとして、きっと冒険を続けられる。