暗鬼島集団失踪事件
「依頼内容は『このクルーズ旅行で起きるであろう事件の真相を探る』だったな」
7月某日、とある資産家の実施したクルーズ旅行にて乗客が約1週間失踪する事件が起きた。
これはその後日談だ。
「依頼人、義門寛次郎さん」
おれは依頼人の老人に向き合う。
資産家・義門寛次郎は気難し気な視線をこちらへ向けた。
「いかにも。首尾は如何かな」
「達成した。求めていたのは、この情報だろう。
あの謎の島に関する秘密だ」
星の記憶についての情報を纏めたファイル、そして持ち帰った不思議な石と碑文を差し出す。
義門氏は皺の刻まれた手でそれを受け取り、中身を検分した。
「よろしい、完璧だ」
老人は満足げに表情を緩ませる。
おれたちは、あの島に纏わる真相を解き明かした。しかし、まだもうひとつ確認すべき謎が残っている。
そう、あの島に漂着した経緯だ。
「……それと。
あんたはあの島の存在を知っていたな?」
「……」
老人は考えの読み取れない顔で、おれの推理を黙って聞いている。
食えない人物である。
「遭難する前、便宜上『暗鬼島』と名付けられた島の資料をクルーズ船内で見つけた。
おれが背後から睡眠薬か何かを嗅がされて、見知らぬ島に流れ着いたのはその直後だ」
自分を背後から眠らせたのは、恐らく義門氏の配下の者だろう。
「おれたちをあの島へ漂着させた犯人は──あんただ」
おれはその指で犯人を指名する。いつもの様に。
「あんたは嘗て、自身が暗鬼島──あの島へ流れ着いた事がある。
そして、その時に島に存在した財宝を持ち帰った。その財宝を元手に資産を増やし、ここまでの資産家となった訳だ。
しかし、島の真相を知る事は叶わなかった。
だから、再度アクセスする方法を模索し、おれたちをあの島へ送り届けたんだ。
島の秘密を探らせる為にな」
老人はそこまで聞いて、漸く含み笑いを漏らした。
「……くくく、さすが死にそ……いや真相探偵。全てお見通しかね。
その通りだよ」
「おいあんた、絶対陰で死にそう探偵って呼んでるだろ」
「あれはまだ若かりし頃、儂は海で遭難してしまった。そしてかの島に辿り着いたのだ。
まるで夢のような島だった。
詳しく調査しようとしたが、惜しくも人手が足りなかった。志半ばで島が沈んでしまってな。
帰りついてからも、かの島の正体が気に掛かっておったのだ」
「だから今度は、クルーズ旅行への招待だと称してあれだけの人数を集めた。
漂着したメンバーの中には、どうやらイレギュラーの人物も居たようだが……。
あんた本人が来なかったのは、そっちから救助の手配をする為だろう」
「うむ。まさか船を自分たちで造って帰って来るとは思わなかったがな。
結果は上々だ。
君に依頼して良かったよ、探偵くん」
「恐悦至極。
だが島の調査が上手く行ったのは、協力してくれた皆のお陰だ」
おれは首を振る。
これは自分の力だけで得た情報ではない。
「さて──この事件を儂が仕組んだと分かった君はどうする。
義憤に任せてこの事を白日の下に晒すかね?
それとも、得た宝を守るために沈黙するかね?」
「さあな。おれは探偵だ。ただ、真相を見つけるだけ。
あんたの依頼は果たしたから、仕事は終わりだ。これを知ってどうするかは、あの人たちが各々で決めるだろ」
真相をどう語るかは、彼らに委ねられている。
ここには22人分の真実がある。

7月某日、とある資産家の実施したクルーズ旅行にて乗客が約1週間失踪する事件が起きた。
これはその後日談だ。
「依頼人、義門寛次郎さん」
おれは依頼人の老人に向き合う。
資産家・義門寛次郎は気難し気な視線をこちらへ向けた。
「いかにも。首尾は如何かな」
「達成した。求めていたのは、この情報だろう。
あの謎の島に関する秘密だ」
星の記憶についての情報を纏めたファイル、そして持ち帰った不思議な石と碑文を差し出す。
義門氏は皺の刻まれた手でそれを受け取り、中身を検分した。
「よろしい、完璧だ」
老人は満足げに表情を緩ませる。
おれたちは、あの島に纏わる真相を解き明かした。しかし、まだもうひとつ確認すべき謎が残っている。
そう、あの島に漂着した経緯だ。
「……それと。
あんたはあの島の存在を知っていたな?」
「……」
老人は考えの読み取れない顔で、おれの推理を黙って聞いている。
食えない人物である。
「遭難する前、便宜上『暗鬼島』と名付けられた島の資料をクルーズ船内で見つけた。
おれが背後から睡眠薬か何かを嗅がされて、見知らぬ島に流れ着いたのはその直後だ」
自分を背後から眠らせたのは、恐らく義門氏の配下の者だろう。
「おれたちをあの島へ漂着させた犯人は──あんただ」
おれはその指で犯人を指名する。いつもの様に。
「あんたは嘗て、自身が暗鬼島──あの島へ流れ着いた事がある。
そして、その時に島に存在した財宝を持ち帰った。その財宝を元手に資産を増やし、ここまでの資産家となった訳だ。
しかし、島の真相を知る事は叶わなかった。
だから、再度アクセスする方法を模索し、おれたちをあの島へ送り届けたんだ。
島の秘密を探らせる為にな」
老人はそこまで聞いて、漸く含み笑いを漏らした。
「……くくく、さすが死にそ……いや真相探偵。全てお見通しかね。
その通りだよ」
「おいあんた、絶対陰で死にそう探偵って呼んでるだろ」
「あれはまだ若かりし頃、儂は海で遭難してしまった。そしてかの島に辿り着いたのだ。
まるで夢のような島だった。
詳しく調査しようとしたが、惜しくも人手が足りなかった。志半ばで島が沈んでしまってな。
帰りついてからも、かの島の正体が気に掛かっておったのだ」
「だから今度は、クルーズ旅行への招待だと称してあれだけの人数を集めた。
漂着したメンバーの中には、どうやらイレギュラーの人物も居たようだが……。
あんた本人が来なかったのは、そっちから救助の手配をする為だろう」
「うむ。まさか船を自分たちで造って帰って来るとは思わなかったがな。
結果は上々だ。
君に依頼して良かったよ、探偵くん」
「恐悦至極。
だが島の調査が上手く行ったのは、協力してくれた皆のお陰だ」
おれは首を振る。
これは自分の力だけで得た情報ではない。
「さて──この事件を儂が仕組んだと分かった君はどうする。
義憤に任せてこの事を白日の下に晒すかね?
それとも、得た宝を守るために沈黙するかね?」
「さあな。おれは探偵だ。ただ、真相を見つけるだけ。
あんたの依頼は果たしたから、仕事は終わりだ。これを知ってどうするかは、あの人たちが各々で決めるだろ」
真相をどう語るかは、彼らに委ねられている。
ここには22人分の真実がある。

「──これにて、事件解決だ」