無題
「ねぇ、まって、にいさん」
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昔の夢を見た。
家族の話をしたせいかもしれないし、アニキと呼ばれて弟を思い出したからかもしれない。
或いは集団での生活に何か思うところがあったのか。
雨ケ谷が家族と縁を切ったのはもう随分と昔の話だ。
確か、年の離れていた弟は当時6歳にいくかいかないかだった気がする。
当時、色々あって雨ケ谷は両親と離れて暮らすことになった。
というより、両親は男のことを見捨てたし、男も両親のことを見捨てたのだ。
その結果、男は周囲の助けにより生き延び、両親は呪いを受けて死ぬことになった。
その呪いは男が呼び込んだものではないが、どこから来たものかは知っていた。
なので、様々なツテにより本来幼い弟は対象から外されることになっていたのだ。
しかし蓋を開けてみれば、役所へ届けられた死亡届は三人分である。
男はそれ以上のことを調べようとはしなかったし、どういう経緯で弟まで亡くなったのかは未だに知らない。
両親と違い弟に思うところがあったわけではない。
しかしそれでも墓参りにさえ行ったことはなかった。
生きていたら今頃高校生だろうか。
しかし死者は歳をとらない。考えても無駄なことだ。
雨ケ谷は、頭を振って感傷を打ち消した。