Eno.746 時文渡

序章 わたしは人になる

 
なんだかんだ無人島での生活を生き延びました。

私のストーリーってだいたいそんなもんですよね。


注文を受けて開拓をこなしたり。
響奏世界を巡っての戦争をやり過ごしたり。
ところによっては冒険者の参謀として働いていたこともあります。

そんな、ちょっと超常的なことに巻き込まれて、
現実的な観点から取り組み、解決とはいかないものの大団円を迎える。

今回も同じ。だから思ったんです。


「どうせ小説から生まれたのなら、エッセイとしてそれを継いでしまおう」



なんて。


わたしの人生なんて、わたしが書いた方が面白いに決まっている。
それがわたしを生み出した者の書くものと比べたって。

彼らは知らないのだ。御子柴桜空の考えが物語から離れた間、
わたしという生きた一人の人間(!)が、どんな冒険をしているか!


そう思えるくらい、島での暮らしは有意義でした。楽しかった。


だから、脱出した暁には、本を一つ書くのです。
ゆくゆくは二冊目。やがては本棚を埋め尽くすほど。

そうしてようやく、あの世界で、
わたしの人生は作られたものではなく、「わたしが記した、わたしの物」となるのです。
出会った人たちと、その本の中で、永い時を生きる。

クレハさんやセイカさんはびっくりするでしょうね。

わたしは怪異なんかじゃない。ましてや、名探偵でもない。
でも、ちゃんとした人間とは終ぞ扱われない。

だから、この本の題名はずっと前から温めていたのです。

この島で自分が手繰る最後の言葉になる。それは。


「わたしは───