Eno.483 辰砂

無題

海面は生暖かくて、水中は冷たくて、しょっぱくて、
口から吐いた泡が水面の光に吸い込まれていく。

揺らいだ視界に、彼の顔がちらついた。


──お、これ、走馬灯ってやつ?


いいね、そのまま流してよ。
好奇心、その期待を勝る反応だったんだ。
もう一回見たい。

嬉しい。
嬉しかった。
俺という者の喪失が、そんな顔をさせたんだ。
人の心に残るというのはいい。
こんなにも嬉しいことは無い。