Eno.933 阿納 漣

海と海と人

分かってはいたが船の上はやることがない。
島にいた時はやることが多すぎて手が足りていなかったのが大違いだ。
遊び道具でも持ち出してくればよかったのだろうか。
何度外を眺めても景色は変わらなかった。
船が沈んだりしていないのは良いことではあるけれども。

しかしこの船旅がいつまで続くか分からない以上、
この暇な時間にも慣れていかないとならないだろう。

……どの道やることがないのだから、今この船に居合わせている面々にでも、
この機会に改めてちゃんと目を向けてみようか。
島にいた頃は彼らは単に協力者の集団であって、個々の人格や内面を
(島からの脱出に関わるものでもなければ)気にかけることはなかった。
今だってあくまで他人なのだから、別に気になるわけではないのだけど、
やることがない以上、多少気にしてみたって問題はないはずだ。

果たしてこの十数人の漂流者は一体どんな人たちなのか?
きっと普通の人なら、もっと早くこういうことを考えていたんだろうな。