Eno.322 Type-R

終章

僕達は無事に船に乗って脱出することが出来た。
まあ、目的を別にした二チームに分かれたけれども、それはそれで構わない。
あっちはあっちで楽しく上手くやるだろうし、僕に心配されたくもないだろう。
なんせ酷く嫌われてしまったからねえ、笑い事ではないが。


僕は海域を出たら船を買って、
再びジーランティスへと足を踏みいれるだろう。
天使は飢えない。天使は飲食を必要としない。天使は疲労をしない。
ジーランティスの特異性があるから
完璧に人間の枷から逃れられるとは思えないが、
それでも長い旅路には十分な後ろ盾になってくれる。


それから僕は、権能の一つ『転移』を使うことが出来る。
天界からあの島へ来る直前、座標を上司から聞いておいた。
だから、上手くいかなければ場所のリセットも可能だ、
時間がズレるかもしれないが、それもまあ、意図的なものだ。


あと、イザヤから『カイのぬいぐるみ』を預かっている。
これはちょっと権能に似た使い方が出来るマジックアイテムだ。
運命を引き寄せるのが『調整』ならば、
このマジックアイテムは失敗する運命を破壊するものだろうか。
もっとうまい使い方があるだろう、これの扱いはゆっくりと決めていきたい。


おまけに天使は長寿で不老だ。
つまり、どれくらいでもチャンスはあるということだ。


何度も何度も航海をして。
何度も何度も探しに行こう。
沈みゆくあの島へ。
助けが来るかどうか解らないままの、あの島へ。
君が完全に失われる、その前に。


だから、何時か君へ至ると信じている。


例え僕ではなくても。
君へ辿り着くのはあの子かもしれないけど。


でも、どちらにおいても『もしも』の文面が在るならば。
もしかして、の可能性があるならば。


……誰かが観測してくれたのならば。
……僕達ではない誰かが肯定してくれたのならば!


シュパーズ、君を救出することが、不可能ではない。



僕は――いいや。



『私』は、それを結論付けています。