Eno.316 鶴岡 星良々

旅の終わり、旅の始まり

わたし達が7日間過ごしたシマは、昨日、ついに海の底に沈んだ。

7日目くらいの、てくのが進水式やったあたりから、「あ、これヤバいやつだなー」って思ってたけど、まずは砂浜の低いところから、海水が川を上るように逆流して、森がさながらマングローブのように水浸しになった。
御伽屋くんのマジックショーが終わった頃にはもう、海面がすぐそこまできていた。どこかに出かけるにしても、海水でぬかるんでいて足元が悪かった。

わたし達2-1は、みんなで資材を集めて、てくの達が造った『グランド・エスケープ号』に乗り込み、全員無事に生きている。
ナベくんが料理に腕を振るってくれたし、教室にいるときよりも運動した気がするからむしろ健康になってるかもしれないけど、まぁそれはそれとして。

上居くんに誘われて、『グランド・エスケープ号』の近くを航行していた調査船らしきクルーザーと接触してみることにした。
航路はてくの達がだいたい算出してくれていたけど、まったくもって自信はなかったし、もし『星の記憶』が本当なのだとしたら、危険な航海になることは目に見えているからね。

調査船にはご老人が乗っていた。
ご老人はわたし達に敵意を向けることはなく、色々なことを話してくれた。
この海が『魔の海』だとか『絶海領域ジーランティス』だとか呼ばれていること。
海自らが世界の壁を開き、何もかもを飲み込んでしまうこと。
世界、言葉、文化、魔法、科学……その全てを飲み込み内包した坩堝。

『其方らも目の当たりにしただろう?
 知らぬ産物を生み出すその手を。 無謀な行動が結果を生み出す様を』


――心当たりがある。

粘土を捏ねて遊んでいただけなのに、パンやピザが焼ける窯ができてしまったこと。
ドラム缶を弄っていたらプールができてしまったこと。
今はもう海底に沈んでしまった、半ばテーマパークと化した拠点とひよこ神様。

今まで、高校の授業で技術や家庭科を真面目に勉強してきたおかげだとずっと思っていた。
クラスのみんなもきっとそうなんだーとか、実はすごい才能の持ち主なのかなーとかって。

クラスメイトがすごい才能の持ち主なのは確かにそうなのかもしれないけど、わたしが凡人だということはわたしが一番よく分かっている。
だから、海底に沈んだ古代文明のおかげだ、というのも納得がいった。

もしも……もしもだよ?

「わたし、実は魔女なんだ~」

とか、ファンの前で言ったら、ファンはどんな反応するのかな。
シマを出たら本当の魔法はもう使えないけど、アイドルは魔法みたいなものだよ。
きれいなものだけを華やかに見せて演出して、ファンを魅了する、現代を……未来を生きる魔女なんだから。

「さ、魔法にかけられる準備は、もうできてる?」