Eno.6 上居 櫂翔

オレの話




※不謹慎な話があります













はじまりは物心ついた直後。
曾祖父ちゃんの葬式だった。


上居家は裕福で、法事や大きな行事がある度に
スーツ等を仕立てるような家。

「好きなものを選びなさい」

母にそう言われて子供用のスーツが並ぶ店に連れてこられたとき、
ふと、これは前に似たようなの着たし、
フワフワだし綺麗だし、
面白そうだからという理由で
反対側にあったものを指さした。

「あれがいい」



頭の中にある1番古い記憶ではあるが、
その時の両親のひきつった顔を覚えている。

色彩に惹かれた子供の戯言だと、
結局家に既にある物と似たようなスーツを買われた。


までならまだよかった。


その後、曾祖父ちゃんの葬式が盛大に執り行われ、
オレは思ったことを言った。

花に囲まれ、さらに曾祖父ちゃんが大切にしてた小物や好きだった食べ物が並ぶ箱。

「あれに入りたい」

母が慌てて、あれは亡くなった人のものだと説明して
オレは頭の中で閃いて、大きな声になったものが出力された。



「早く死にたい」



父に強く腕を掴まれ、
病院のような場所へ連れていかれたのを覚えている。

頭の病だとか、心の病だとか。
そこからはよく覚えていない。

ただ子供ながらに確信したのは
やりたい事をやるというのは
結構な努力が必要という事だ。
曾祖父ちゃんには実際申し訳ないことをした……



オレはこの経験を、
抑圧された恐怖ではなく、
難易度の高い事への挑戦のワクワク感。
できないではなく、努力すればやれそうだと。
噛み砕いて言っちゃえば
レアリティを感じてしまっていた。





         進捗


ドレスは知恵巡らせて誕生日はお金の大切さや使い方を学びたいから現金が欲しいとプレゼンをして小学生低学年の時に買って着た。

棺桶は……まぁでかい箱買って花に囲まれて寝てみたり。
擬似的な本番はさすがに高くて手が出せなかったな。
実家にバレたらまた捕まるだろうから人呼ぶのも難しいし。
死ぬ前に「元気なうちにやりたい!」って言って挑戦だな。

高校に入って東京へ出て一人暮らしをしたが
実家からは時々鬼凸を食らう。
裕福で少し頭の固く、価値観の古い家の長男だからな。
数少ない苦手なイベントではあるが、
そのうち向き合わねばならぬ事へ
漠然とした興味が無いとなると嘘になる。

やりたい事をやるにはひたすら情熱を潜伏させて
コミュニティに混ざって人脈を編み込み
その時への準備を進めていくことを覚えた。
やりたい事をやり過ぎるというのは
他の人のやりたい事を大いに阻害してしまうから。






めちゃくちゃ
    忙しいだけの
         狂人



ただ、未知の海へと流れ着いた臨海学校。
人脈を広げすぎて学校は勉学の結果を提出する場となってしまい
普段あまり話したことがないクラスメイト達ではあったが
なんだかんだ大事な友人達ではあった。

そして、オレが思う何倍も色々背負い、
この漂流で過去の断片H O解放して行った。




「本気で何かを好きになったことある?」




「私から見た上居くんは、
 “自分の好きって気持ちを追いかけることに本気の”男の子だよ」




相反する言葉が打ち消しあって、
オレはこの臨海学校では、潜伏するのをやめた。

オレも過去の断片H Oを解放したのだろう。




それが今後孤独を呼び寄せようとも、
今はとても楽しい。




「カイトくんの知らない面たくさん見れたな〜って思った」




 …………孤独、呼び寄せるかな?