沈みゆく
もっといい方法はあったのだろうと思うし、
自分が間違っていたのだろうな、とも思う。
ただ…… これしか無かった。あの時は、少なくとも。
そのままにして欲しい、なんて言った所で、
自分の命を放り出すような真似は、おかしくみられる。
そこで救いの手を伸ばすのをやめられるほど、
差し出される善意を、軟いと思えなかった。
人を傷つけるより、人を助ける方が……ずっとその意志を貫き通せるものだから。
そうじゃなくても、ぼくは悪者だ。
純粋な子を道連れに残ろうなんて、たとえ言ったりしていたら。
道連れにするということも、自分で嫌だと思うぐらいには……
長く一緒に過ごしすぎてもいた。
でも、言葉を重ねたら、違う結末もあったかもしれない。
説明は出来ないけど残りたいって言ったら、そのまま放置していてくれていたかも。
ともだちが本当に他の人とじゃ嫌だって言ったりしたら、
この終焉を一緒にすることもあったのかも。
それには時間が足りなかったし…… 疲れてきていたのかもね。
結局、誰かの為というのを大義名分に、面倒から逃げ出す我儘をしただけ。
沈みゆく今は、全てが後の祭り。
この静けさと染みる海水が、選択の答え。
人の心に傷を残して裏切ってでも、掴み取りたかったもの。
これで満足か、って言えば。
「もっと悪者になってもよかったかな」
7日の間だけのともだちだった。
でも、きみがまだ側にいてくれたら……
この終わりも退屈ではなかったのかな。
正しくない。
理解されない。
全てを意思疎通する時間も気力もない。
褒められることがあるとしたら、
それでも傷跡を残す相手が少なかったこと。
ぼくの顔も知らなくて去っていく人の方が、あの船にはずっと多いはずだから。
何も気にせず、自分達で自分達の人生を楽しんでいるはず。
全員に対して、そうであればよくて、
時間の経った今となっては、
そうなっていないかと、思っている。
「元気でね さようなら」
身勝手な願いも、口まで水に浸る前に呟いてしまって。
目を閉じる。