Eno.275 君影 早霧

8日目 海上


私たちは、ようやく日常へ帰れるらしい。

誰も欠けずに、どころかむしろ面子は増えた。
そのうちの一羽、拠点に残っていた兎を引き取ることに決めた。

理不尽に抗う術すらなく沈むはずだった小さな命。
人の腕の中に逃げずに収まり、今は籠で静かにしている大人しい子。

どうにも他人事とは思えず、あとふわふわで柔らかくて
仕草も見た目もとんでもなく可愛かったのでつい貰い受けてしまった。

……以前なら、いつまで世話が出来るかもわからないと避けていただろう。
帰って一番にすることは、叔父への連絡になりそうだ。


楽しかったとか、終わってみればいい思い出だとか。
そんな風には思えない、ただ疲弊と反省しかない生活だった。

限界まで無理を通していた間の記憶は曖昧だ。
覚えているだけで星名ちゃんや香取、それ以上に上矢に、
きっと気づいていないところでも心配や迷惑をかけていて。
こんなこと、二度とごめんだという気持ちしかない。

それでも皆が無事で、共に日常へ帰れるのなら。
今は生き延びた達成感と感動だけに浸っておくことにしよう。

サバイバルはもう絶対にやりたくないけど!