Eno.311 防寒着

I and

 
「……あのー、本当に……いいの?」

 何度目か、というような疑問の声。返される答えはいつだって同じで、そんなやりとりをする度によく分からない……温かいような気持ちが心に浮かんでいました。

「だってわたし、なんの取り柄もなくて、どこにでもある……
 ……ひぃ。ごめんなさい、もう言いません……」

 結構本気で怒られました。
 ……きっとこういうのも、否定されたくて言っているような気がします。いつも正面から目を逸らさずに叱ってくれるから、それに甘えてしまっているのでしょう、たぶん。

 怒られてしまった空気を変えるために、なにか別の話題を探そうとします。ひとつ思いあたりがありました。

「……あの。これから行くところって、どういう感じなの?
 なんか……すっごいファンタジーって印象なんだけど。
 あと、シエキ? とかいうのもよく分かんないし」

 ……………………説明されても、やはりよく分かりませんでした。
 なんだか違う世界の話を聞いているみたいで……実際にそうなのでしょう。映画の話と言われたほうがまだ理解しやすそうです。
 これ以上になにを聞けばいいのかさえ分かりませんし、実際に見たほうが早いと言われれば、きっとそうなのでしょう。

 でも、ひとつだけ。ずっと引っかかっていることがありました。

「よく分かんないけどさ。わたし、誰かと一緒にいるんなら、
 ほかの人じゃなくて……マイさんがいいよ。だめ?」

 そう……訊ねてみました。