Eno.333 豪麗 芽斗

豪麗の日記 キボウ 前編

この未知なる体験で
俺はこの学友たちのスゴさをまた改めて思い知る。
そして、誇りに思うのだった。

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脱出計画が発足してから数日。

俺たちは皆で作り上げた船に乗り、
出来うる万全の装備をそなえて海へ出た。

沈みゆく島。
不思議ばかりの思い出の地を背に、
誰一人として欠けることなく。


大人でも普通はこんなこと成し遂げられないはずだ。
だが俺は意外には思わなかった。


2-1このクラスは、希望そのものなのだ。


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2023年 4月 始業式の日。

俺は"あれから"ずっと休みがちだった。

年度の変わり目くらいは登校せねばと
窮屈な制服に袖を通し、家を出る。

足取りは重い。

ハレの日であるのに雲鳴りがしていて、
ああ、急がねば降ると思った。

いそごう。

初日から濡れたくはないだろう。

傘もない。

早く行かねば。


……鈍重な足取りは変わらなかった。


ポツ、ポツ、と細い雨粒が道の先をうつ。

その一粒が並木の桜の花びらを鋭く撃ち落とし、
俺の頬に負け姿を貼り付けた。

ああ。
これに抗う気力がない。

次第に雨足は早くなり
遠くで予鈴が鳴った。


俺はその場で立ち尽くしたままで、
雨は頬の花びらを洗いながしてくれるどころか
張り子の糊のようにベタベタと身を固めてくる。

このまま動けなくなったらどうするんだろうと
他人事のように考えていると

「まあ」

と驚く声がした。

見知った老齢の女性が、傘を持ってこちらを見ていた。





営業時間外でも食べ物の匂いが満ちる店内で
貸してもらったタオルをかぶり、
冷えた水をもらう。

「ありがとう」「申し訳ない」と言いたくて
口を動かすも、うまく声がでない。
情けなさに身を縮めると
おばあさんは人の好い声で「いいのよ」と言った。

「なにか食べる?」という問いかけには首を横に振る。
そこまでご厄介になるわけにはいかないからだ。


ここの一家にはいつもコンディションを見抜かれている気がする。
同級の鍋島直哉という男を筆頭に。

おばあさんも大将も何か察しているのか
座ったまま動けずにいる俺をそっとしておいてくれた。


年季の入った掛け時計の針の音を聞いているうちに幾時間経ち、
昼飯時が近づくにつれ仕込まれている料理の匂いは濃くなる。

やがて学ランの男が帰ってきた。

こちらを一瞥し口を開きかける。
おそらく「学校にいなかったやつがどうしてここに」
という意味だ。
そして、問うまでもなく察したから口を閉じたのだ。

男はいつも通りぶっきらぼうに厨房と言葉を交わすと
店の奥へ入っていく。

……前に、思い出したようにこちらに声をかけてきた。

「クラスの奴ら来るぞ」


は。
気まずいと思う間もなくガヤガヤと声が響いてきた。

午前終わりだからと昼飯を食いに来たのだろう、
よく見るフットワークの軽いメンツだ。
前年違うクラスだった人間もちらほら。

「ほらほら~こっち」と何故か俺のいるテーブル周辺に集いはじめる。
休んだことに触れられるでもなく、大羽など
「奇遇だね!」と言わんばかりにクラス替え表を見せてきた。
こいつらと同じクラスということらしい。


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後編へ続く