Eno.571 みちる

遭難日誌その8~みちる編


花が咲き
(そこは偽りの花園)

火は猛り、灰が流れ
(焔は容赦なく燃え、飲み込まれたら灰と化す)

蟲が這い寄り、背をなぞり
(百足は肢体を柔らかく締め付け、逃さない)

暗い底に下ろされた、蜘蛛の糸に絡め取られ
(いくら穢れていようとも、それは釈迦の手にしか見えず)



まわり

回り

巡り、廻り



いつしか、【箱】に閉じ籠もり、その生を終えようとした。

それが正しいと思っていた。
(だって、一生懸命考えたもの)

これ以上悩んで苦しんで、誰かを誤って傷付けるぐらいなら生きなくていい。
(先のことなんて、これっぽっちも考えたくなかったていなかった)



でも



社会や世界には居場所があると教えてくれた悪いヒトがいた。
"秘密"は秘密のまま口を閉ざしててもいいと諭してくれた狡い人がいた。
広い世界や日本の、行ったことがない素敵な場所を伝えてくれた賢い人がいた。
悪いことをしても間違いを正してくれて、それでも謝ってしまう優しい人がいた。
わたしの考えを、言葉を、全て受け入れてくれたヒトがいた。

パンケーキを作ってくれた。
クッキーを貰って喜んでくれた。
不思議な部屋を作ってくれた。
人知れず大きな物を沢山作ってくれた。

【箱】に閉じ籠もるには勿体ないぐらい楽しい一時を過ごせて、わたしはもっと生きてみたいと思えた。
そう思えて、やっと、お母さんを残したくないと気付くことが出来た。

帰ったら、何から話そう。

わたしが嘘を吐いたこと。約束を破ったこと。取り返しのつかない過ちを犯したこと。シマで不思議な人達と出会ったこと。サバイバルをしたこと。神秘的な歴史に触れたこと。

たくさん、たくさんある。きっと、1日では語り尽くせない。
それでも話しておきたいんだ。
わたしは、もう一度ここから歩き出したいから。
会いたい人達が、たくさんいるから。



花が咲き
火は猛り、灰が流れ
蟲が這い寄り、背をなぞり
暗い底に下ろされた、蜘蛛の糸に絡め取られ
廻り、廻り、巡り廻り

貴方は、もう一度再生するだろう。
それが、貴方の物語。