Eno.779 クロタネ

ほんの少し早い、どこかの誰かのエピローグ

ざぁ、ざぁ。

雨の音に混ざって、聞こえた学校のチャイムの音で目が覚める。
ふあり、とあくびを浮かべて。
静かな校舎から、変りない、外の風景を眺める。

家のベッドの寝心地を、すっかり忘れてしまって。
もはや慣れてしまった、保健室のベッドの固さ。

起き上がっては、いつかの夢を思い出す。
確かに起きた、短くて長い夢。

交換しあった、小さなお守り。
貰ったぬいぐるみ。


待ち受けになっている、皆の写真。

それをみて、微笑んで。
自分が、確かに自分であることを、再確認して、
それから少し安心して。

今日が始まる。

なんか、いいことあったのかい?



調子よく、学校の怪談が尋ねる。
学校の怪談オレは答える。

ナイショ!



自分と同じように、学校の怪談になってしまった彼は、
どこか羨ましそうに、けれど、何か安心したように笑うのだ。

たったか、たったか。
走って、向かうは家庭科室。

料理の練習のために、ごはんを作って。
それから図工室にいっては作品作りの毎日だ。

美味しい料理を振舞う約束も、
またみんなに花火をみせるのだという、自分の目標も、
自分が作品で有名になって、誰かのところに届けたいという夢も

欲張りに叶えたいので。






―   *   ―


オレの名前は、みんながおぼえてくれていたら
それでいいです。そのかわり、オレはみんなの事
忘れないからね!

オレの事は何も知らなくていいです。
そのかわり、思い出を忘れないでほしい。

みんな、大事なお友達です。
だから、どんなそんざいでもいいんです。
今あるみんなが好きだから。


島のみんなが大好きです。
だから、また会えたら、えがおで会おうね。
みんなが、えがおでありますように。
みんながいてくれて安心でした。

オレは
強くて泣かない子です。





だから。
なくのなら、きっと。
みんなと再会した時、うれしさでなくくらいにしたい。
それまで、ゼッタイに泣かないよ。

島の大好きなみんなへ
ありがとう!






――


島で書いていた、手紙。
誰にも渡さなかった手紙。

小さく折りたたんで、持ち歩いている。
これは、きっと少年の願いであり、おまじないなのだ。
こわいことがあっても、
つらいことがあっても、

みんなとまたあいたいからこそ、
つよくあろうと、あきらめないでいようと、
いきぬこうと。

…だから。またあえたらさ。いっぱい、あまえさせてね



雨降る校舎で、少年は、誰かを待っている。
再会を願っている。