豪麗の日記 キボウ 後編
朝食から数時間しか経っていないはずなのに
食べ盛りの高校生たちのテーブルにはてんこもりに飯が並んでいる。
気まずいので俺も点心を頼んだ。
隣に座っている何森がスマホを見せてきて言う。
「メト。今年の先生、元芸人らしいぜ」
ウケているのかウケてないのかわからない動画が流れている。
俺に向けられた笑顔はたぶん
おもしろいから少しだけでも見に来てみなよ、ということなのだ。
周りの話を聞けばエジプトから来た9歳の交換留学生もいるらしい。
それはさすがに盛りすぎだとして……。
それぞれが好きなように喋っている風景は騒がしい。
料理を運ぶ鍋島に釘をさされている。
サボってバツの悪かった気分が喧騒に押し流される。
よくもわるくも、適当に。
◆
土日を挟んだ次の登校日。
気付けば教室の自分の席にいた。
担任の先生は真面目そうだが確かにユニークだ。
9歳の天才エジプト人留学生も……実在した。
授業初日から鳩が飛ぶやら狩られるやら、
メカじみた女子に宣戦布告もされ、
俺のロケットパンチが飛ばないことを嘆かれていたら
ペットボトルロケットが天井に突き刺さり
ロケット禁止令が出た。
その礼状は翌日には消えており、
誰かが食べたらしい。
何故か先生の記憶にもなかった。
………………。
これは夢かもしれない。
あまりにもとりとめがない。
だが見る夢を選べるなら中々わるい内容ではなく
ほどほどに絡まれ、飽きがこないので
ただ惰性でそれを選びつづけてみることにした。
気付けば、俺は欠席しなくなっていた。
・
・
・
ボクシングは小さい頃からの
ライフワークであったので
懲りずに、というか習慣としてジムに通う。
6月も終わりかける頃、コーチに言われた。
「芽斗。やっと生きる気になったらしいな」
……たしかに死んでしまいたいと思ったりもしたが
それをコーチに伝えたことはない。
そして、生きる気になったつもりもなかったので
その言葉には面食らった。
───────────
真暗な心の風穴に小さな導明かりがあることに気付く。
目をこらせばそれはよく覚えのある騒がしさの色で、
暗闇の中 点々と続いている。
そうか。
俺は歩けるようになっていたのか。
道のり遠くとも、間違っていたとしても
縋っていいものをやっと見つけた俺は
帰り路すこしだけ泣いた。
食べ盛りの高校生たちのテーブルにはてんこもりに飯が並んでいる。
気まずいので俺も点心を頼んだ。
隣に座っている何森がスマホを見せてきて言う。
「メト。今年の先生、元芸人らしいぜ」
ウケているのかウケてないのかわからない動画が流れている。
俺に向けられた笑顔はたぶん
おもしろいから少しだけでも見に来てみなよ、ということなのだ。
周りの話を聞けばエジプトから来た9歳の交換留学生もいるらしい。
それはさすがに盛りすぎだとして……。
それぞれが好きなように喋っている風景は騒がしい。
料理を運ぶ鍋島に釘をさされている。
サボってバツの悪かった気分が喧騒に押し流される。
よくもわるくも、適当に。
◆
土日を挟んだ次の登校日。
気付けば教室の自分の席にいた。
担任の先生は真面目そうだが確かにユニークだ。
9歳の天才エジプト人留学生も……実在した。
授業初日から鳩が飛ぶやら狩られるやら、
メカじみた女子に宣戦布告もされ、
俺のロケットパンチが飛ばないことを嘆かれていたら
ペットボトルロケットが天井に突き刺さり
ロケット禁止令が出た。
その礼状は翌日には消えており、
誰かが食べたらしい。
何故か先生の記憶にもなかった。
………………。
これは夢かもしれない。
あまりにもとりとめがない。
だが見る夢を選べるなら中々わるい内容ではなく
ほどほどに絡まれ、飽きがこないので
ただ惰性でそれを選びつづけてみることにした。
気付けば、俺は欠席しなくなっていた。
・
・
・
ボクシングは小さい頃からの
ライフワークであったので
懲りずに、というか習慣としてジムに通う。
6月も終わりかける頃、コーチに言われた。
「芽斗。やっと生きる気になったらしいな」
……たしかに死んでしまいたいと思ったりもしたが
それをコーチに伝えたことはない。
そして、生きる気になったつもりもなかったので
その言葉には面食らった。
───────────
真暗な心の風穴に小さな導明かりがあることに気付く。
目をこらせばそれはよく覚えのある騒がしさの色で、
暗闇の中 点々と続いている。
そうか。
俺は歩けるようになっていたのか。
道のり遠くとも、間違っていたとしても
縋っていいものをやっと見つけた俺は
帰り路すこしだけ泣いた。