Eno.908 紅雨

船旅

小舟の上で目を覚ます。

正直なこと言うと、俺はネヌの中で2番目くらいには嫌いなやつに入ってると思ってたんだよなァ。
あの嵐の日以降は露骨に距離置かれてるのは分かってたし。

そんなだから、出航前に「お前が残るなら俺も残る」って話した時は、
言い合いになると思って頭ん中で“手札”を考えてた。
ネヌからすりゃ嫌いな奴と運命を共になんてしたくねぇだろうからよ。

…まあ結果から言やあぜーんぶ杞憂って奴だったらしいけど。
こうして舟の上で目を覚ます度夢かと思っちまう。

……こんな小せぇ舟で沈まず航海できてる時点で夢みたいなもんか?

…とはいえ、だ。
大団円とはお世辞にも言えねぇが、そのお陰で白雨に合わせる顔もできた。
アイツの二度の遭難と同じように、見捨てることなく。


───だからまぁ、良いか悪いかで言や“良かった”んだよな?
俺はそう信じるぜ。



…欲を言や、“あの人”って奴のこと聞いてみたいけどよ、それ聞くのって今じゃねぇよな。