・神崎の手記(特別な人に対する信用)
ニシュと一緒にみんなの所へと戻る前、その日常会話は少しだけ続いていた。
「みどりの“み”よ。誰かが緑色って言ったから」
ニシュは目が不自由だ。その情報から赤子の事をそう名付けたのだろう。
確かに俺がエレンと呼ぶその赤子の服は緑色だ。
だが、問題はそういう事では無い。そういう事ではないのだが、
それを伝えていって理解して貰えるまでにはまだ時間が掛かると判断した。
今までもそうだ。俺と彼女の会話は平行線で在り続け、
今こうして共に居られるようになるまで相当な時間を要した。
互いの意見が互いに届き、緩やかに曲がるこの平行線が交わる時は
遠い遠い未来の話になるかもしれないし、それは誰にも分からない事だった。
「良い名前じゃない。省略したらミシュシピュだわ。可愛い響きでしょう?」
何が可愛い響きでしょうだ。可愛いのはそうして振る舞う君の方だろと思ったが、
絶対にそれは口に出さない事にした。
……アホだと思われたくない。後、普通に口に出すのが恥ずかしいから。
みんなの所へ戻ると、少々違和感を感じる会話を繰り広げていた。
妙に話しにくそうな。そういう、会話に間の多い違和感。
「素敵な思い出になりそうですね! こういうのも!」
「も……もうちょっとでお別れとなると寂しいな!」
「なーに、縁でもあればまたきっと会えるよ! ほら!
ここまでやってきたんだからさ!」
あぁ、そういう事か。会話の途中から参加した為、
全く何故そういう事になったのかは分からないが“しりとり”になっている。
……いや、何やってんだホントに。
船の到着まで時間が残り少ないというのに自分たちで会話をしづらくしてどうする。
「再会出来るかどうかって話か? 起きた現象なら再現可能だろう。
上手く言えないが世界を区切るモノをもう一度無くせば良い。
なんて言えばいいんだろうな……境界線?」
俺はそう口にする事で“しりとり”の終了条件を満たし、
この誰も得をしない謎のゲームに幕を下ろした。
この場に居る人達を確認すると、まだここに居ない人もいるようだった。
だから俺はそのゲームを終えた後に、みんなと普通の会話を始める。
「一度みんなと別れる事になるのも理解している。
残された時間で星を見るんだろ?
それなら今ここに居ない人達も集めて来ないとな。
今やるべき事が見つかったから少しここを離れるよ」
あれだけ苦労して島で星を見ようとしていたのに、
彼らは飲んで食べて騒いでと、宴に夢中でその機を逃してここに居ると聞いた。
全く信じられん。何を考えているのか全く分からない。
だから、まだ星を共に見る機会自体は残されている。
俺はその機会を実現する為に、せめて出来る事をしようと思った。
ここに居ない人を探して来ると言い残し、俺はこの場を後にした。
――ニシュならもう大丈夫だ。
随分時間は掛かったが、互いに伝えるべき事を伝えた。
船から降りる時は一緒だと、彼女を“信用”している。
「みどりの“み”よ。誰かが緑色って言ったから」
ニシュは目が不自由だ。その情報から赤子の事をそう名付けたのだろう。
確かに俺がエレンと呼ぶその赤子の服は緑色だ。
だが、問題はそういう事では無い。そういう事ではないのだが、
それを伝えていって理解して貰えるまでにはまだ時間が掛かると判断した。
今までもそうだ。俺と彼女の会話は平行線で在り続け、
今こうして共に居られるようになるまで相当な時間を要した。
互いの意見が互いに届き、緩やかに曲がるこの平行線が交わる時は
遠い遠い未来の話になるかもしれないし、それは誰にも分からない事だった。
「良い名前じゃない。省略したらミシュシピュだわ。可愛い響きでしょう?」
何が可愛い響きでしょうだ。可愛いのはそうして振る舞う君の方だろと思ったが、
絶対にそれは口に出さない事にした。
……アホだと思われたくない。後、普通に口に出すのが恥ずかしいから。
みんなの所へ戻ると、少々違和感を感じる会話を繰り広げていた。
妙に話しにくそうな。そういう、会話に間の多い違和感。
「素敵な思い出になりそうですね! こういうのも!」
「も……もうちょっとでお別れとなると寂しいな!」
「なーに、縁でもあればまたきっと会えるよ! ほら!
ここまでやってきたんだからさ!」
あぁ、そういう事か。会話の途中から参加した為、
全く何故そういう事になったのかは分からないが“しりとり”になっている。
……いや、何やってんだホントに。
船の到着まで時間が残り少ないというのに自分たちで会話をしづらくしてどうする。
「再会出来るかどうかって話か? 起きた現象なら再現可能だろう。
上手く言えないが世界を区切るモノをもう一度無くせば良い。
なんて言えばいいんだろうな……境界線?」
俺はそう口にする事で“しりとり”の終了条件を満たし、
この誰も得をしない謎のゲームに幕を下ろした。
この場に居る人達を確認すると、まだここに居ない人もいるようだった。
だから俺はそのゲームを終えた後に、みんなと普通の会話を始める。
「一度みんなと別れる事になるのも理解している。
残された時間で星を見るんだろ?
それなら今ここに居ない人達も集めて来ないとな。
今やるべき事が見つかったから少しここを離れるよ」
あれだけ苦労して島で星を見ようとしていたのに、
彼らは飲んで食べて騒いでと、宴に夢中でその機を逃してここに居ると聞いた。
全く信じられん。何を考えているのか全く分からない。
だから、まだ星を共に見る機会自体は残されている。
俺はその機会を実現する為に、せめて出来る事をしようと思った。
ここに居ない人を探して来ると言い残し、俺はこの場を後にした。
――ニシュならもう大丈夫だ。
随分時間は掛かったが、互いに伝えるべき事を伝えた。
船から降りる時は一緒だと、彼女を“信用”している。