Eno.101 アストラペの黄金駆動

ザ・ホームウェイ

思ったよりも長い船旅に退屈したオレは、
ふらりと分隊長の所へ行ってみると、彼女はにっこりと微笑んだ。

「どうしたんですか? ストラさん。もうすぐ帰れるので、心配はご無用ですよ!」

「……分隊長~」

「何ですかいきなり」

「この辺って"比較的安全な海域"って言うけどさぁ、本当に大丈夫なのか?

「比較的、ですからね。操舵を誤ればいつでも座礁する危険はありますし」

「だいたい、デッカい化け物が出てくる時点で"安全なとこ"なんてねぇじゃん!」

「確かにそうですが、この海にはそもそも"絶対"なんてモノはないんです。
 私の事前情報も、完全にはあてにならなかったしょう?」

「そうだな。今日使えた知識も明日はどうだか」

「なので、調査がいつまでも終わらない原因のひとつになっているんですよね。
 とにかく、帰るまでが冒険ですよ。調査隊の標語でもあります」

「おいおい、オレは一応冒険者なんだぜ。当たり前だろ?」

「当たり前だからこそ、大切にするべきですよ。
 その基盤が失われるのは、一瞬ですから……」


「ところでストラさん。出航前の、あの不思議な光は何だったんですか?
 私の船に乗っていた研究員さんも気になっていましたよ。いろいろ訊かれたでしょう?

「ああ、アレのことか? アレはな――」


オレと分隊長は例の"不思議な光"のことや、珍しい動植物、この海の歴史にまつわる遺物のことについて話した。
これらの情報をまとめた各種資料も調査隊に提出してある。

「……すごいです。これらはジーランティスの秘密への、貴重な足掛かりになりそうですね」

「おそらくまだまだ謎が隠されているかもしれませんが、我々は今後も調査を続けます。
 少しでも多くの人に、安全な異世界航路をもたらすためにも!」

「というわけで、ストラさん! あなたもぜひ我々調査隊に入りませんか!!」

「却下」

「そんなあ~~~~~!!」

「ンな事言われたってなぁ……」


……何でも、分隊長が所属する調査隊はいつでも人手不足なんだとか。
調査隊に入るのは勘弁したいが、願わくばこの海で出会った仲間たちのように
また素敵な出会いがあったら良いな、と思った。